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「……はあ?」
ああ、やっぱりそういう反応が返ってくると思ってました。今までただでさえ迷惑かけまくってるのにいきなり頭撫でてくださいはおかしいですよね知ってた。
でももうあたし、色々我慢できないんです。許してください。
「お願い、お願いします……」
「…………」
黙っているけど、多分動揺しているんだろう。あたしだって動揺している。
暫しの沈黙の後、黙っていた先輩が自らの頭をガシガシと掻きむしる。
「ああもう、撫でれば良いんだな?」
……どうやら、撫でてくれるらしい。
「あっ……」
先輩の手が頭に触れた瞬間、言いようのない懐かしさと安心感に包まれる。
さっきまでの変な気持ちは、もう消えていた。
「……すみません、落ち着きました。ありがとうございます……」
「……これで落ち着いたのかよ。変な奴だな」
だけど、どうしてだろう。急にこんな切ない気持ちになってしまうなんて、あたしは本格的におかしくなってしまったのだろうか。
頭を撫でて欲しいなんて。抱きしめて欲しいなんて。そ、その、キ、キス……して欲しいなんて。そんなのまるであたしが常磐先輩のこと、好きみたいじゃ……
「好き!?」
「煩い!今度は何だ!」
「す、すみません!なんでもないです!」
何でも、無くはないけど。でもそんな。好きだなんて。あたし、この人のこと何も知らないのに。
ま、まあその、カラオケの時助けてくれたり、兄から庇ってくれたりして優しいところもあるって知ったけど。でもそんなことで好きになっちゃうなんて、ある!?
だとしたらあたし、あまりにもチョロ過ぎない!?
落ち着け、クールになるんだ九条宵子。
そもそもあたしは家族以外の男性と接した経験が殆ど無い。新聞部の西園寺先輩は優しいけど、そういうのじゃないし。だからその、あまりにも男性経験が無さすぎてちょっとおかしくなっちゃっただけだ。そうに違いない。
それに、常磐先輩は普段冷たいけど優しいところを見せられて、アレだ、その……ギャップ萌え?っていうの?それにキュンってしちゃっただけだよね。うん!考えれば考える程そうだと思えてきた!
「おい、九条……」
「はい!大丈夫です!」
あまりにも頭の中で長考しすぎたせいか、常磐先輩が話しかけてきたが、問題が解決してすっきりしたあたしは彼に笑顔で応える。
「お、おう……?なら良い。夜も遅い。とっとと寝ろ」
「はい!寝ます!」
「……何だこいつは」
言われた通り、さっさとベッドに潜り込む。
……そうか。あたしは気絶して一瞬夢を見ちゃっただけで、まだ夜だったんだ。……ってことは、常磐先輩はあたしが夢を見て泣いていることに気づいて、わざわざ起きて声をかけてくれたってことで……。
「……っ!!」
……だめ。それに気づいちゃダメだあたし。気づく前に寝るんだあたし。ああでもこの布団、常磐先輩の匂いがするから余計に意識しちゃってだめ……!
結局、あたしはその後緊張やら興奮やらで眠ることが出来ず、寝不足で次の日を迎えることになってしまうのであった。
第五話に続く……




