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先輩に怒鳴られ、勢いのまま寝ますと言ってしまったが、あたしは何処で寝れば良いのだろうか。
この選択肢を間違える訳にはいかない。だけどどの選択が最適なのかが分からない。一番確実なのは先輩本人に何処で寝るべきか訊ねることだけど。
……うう。怖いけどこの際仕方ない。
「あ、あの。あたしは何処で寝たらいいですかね……?」
あたしが聞くと、常磐先輩は不機嫌そうに舌打ちを返してくれた。わあ、やっぱり怖い。
「……そこのベッドを使え」
「え、でも先輩は……」
「俺は床で寝る」
「そんなの。色々して貰ってるのにベッドまで貸してもらうなんて申し訳ないです」
「客人を床で眠らせる訳にはいかないだろうが。黙って使え」
仕方ない。本人がそう言うんだから有難く使わせて貰うことにしよう。……というか、これ以上反論したら更に不機嫌にさせてしまいそうな気がする。
「…………っ!?!?」
布団に潜り込んですぐ、あたしは布団を投げ飛ばして跳ね起きる。
「……っ、お前、何のつもりだ」
投げ飛ばした布団は常磐先輩に直撃したようで、彼の額に怒りマークが見える。だけどそれどころじゃない。だって、だって……!
「に、匂いがっ……」
「……はあ?」
「な、何でもないです」
だってここはいつも彼がいつも眠っている場所。つまり彼の香りがバッチリ染み付いている訳で。
そういやさっき兄から庇って貰った時、抱きしめてもらった時もこんな匂いだったなあ……って思いだしたらもう止まんなくて。
「ひぃぃっ!」
「煩い!何だ!」
そういえばパジャマだって彼のものじゃないか。だめだ。このまま着てたらぎゅってされたこと思い出しちゃう……!
「……!!急に脱ぎ出すな変態女!!」
「ふえっ!?」
慌ててパジャマを脱ごうとするあたしに布団がクリーンヒット。どうやら先輩がこちらに投げてきたらしい。
……そこでキャパオーバー。
あたしの意識はそのまま途絶えてしまったのである。




