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……遅いな。
ここで待ってろと言われたけど、他人の部屋に一人で残されてしまうのは何とも居心地が悪い。
それに、どれだけ長電話してるんだろう。やっぱり彼女がいるんじゃないのか。それで、「私以外の女を部屋に泊めるの!?サイテー!」みたいな話になって、拗れて時間がかかっているに違いない。
まさか、このまま待っていたら彼女の凸があったりして……!?
「しゅ、修羅場……!?」
出来れば巻き込まれるのは御免だが、恋人同士の修羅場とやらを見てみたい好奇心はある。ああでもキャットファイトになった時に勝てる自信は無い。こうなったらベッドの下にでも隠れて……。
「……何してるんだ、お前」
「きゃんっ!」
も、戻ってきてたの!?急に声をかけられて驚いて飛び上がろうとしたが、現在あたしはベッドの下に潜り込もうとしている途中。当然思いっきり頭をぶつけた。
「あ、あたた……」
「ふっ、鈍臭女。お前は暗くて狭いところが住処なのか?」
「そ、そんなことないです。その、何か隠してないかと思いまして……」
この言い訳は宜しくなかったかもしれない。彼の眉間の皺が増える。ああ、不機嫌になった証拠だ。
「へえ。他人の部屋のベッドの下を物色か……随分良い趣味をお持ちだな」
「すみません本当は恋人さんの凸に備えて隠れようとしてました」
これ以上嫌味を言われるのは精神的にもキツかったので、本当の理由を話した。それはそれで呆れた顔をこちらに向けられてしまった訳だが。
「……はあ。恋人は居ないと言っただろう。さっき言ったばかりのことも覚えていられないのか、とんだ鳥頭だな」
「あう、そうでした……」
「それと、"会長" からこれからも恋人の振りは続けるようにとの命令だ」
「あー、はいはい。恋人の振り、ですねー……」
……ん?この人今、なんて。
「こ、恋人ですか!?」
言われたことの重大さに気づき、思わず後退りする。
「その方がお前の兄に対しての牽制になる。それに、お前に何かあった時すぐ動けるように側に一人置いておきたいんだと。それには恋人同士としておいた方が都合が良いと "会長" が仰っているのでな」
「で、でも、その!あたしなんかと恋人とか嫌じゃないですか!?常磐先輩、好きな人とか居ないんですか!?」
「生憎だが、そんな奴は存在しない。……逆にお前はどうなんだ」
「悲しいかな彼氏どころか恋したこともありませんけど!」
「……だと思った」
うう。サラッとめちゃくちゃ失礼なことを言われた気がするけど、事実なんだから否定出来ない。
「別にわざわざ言いふらす必要も無いし、そういう風に振る舞う必要も無い。ただ、聞かれた時に恋人だと答えるようにしておけば自然だろうという話なだけだ。お前の問題が解決したら別れたということにしておけば問題無いだろう」
「そ、それなら大丈夫ですけど……」
こ、恋人かあ。振りとはいえ、初めての恋人……。
何でだろう。ちょっとだけドキドキしてしまうのは、気の所為だろうか。




