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「……どうしよう」
家に帰りたくなかったので勢いで泊まりの予定だったと兄に言ってしまったが、勿論あたしに泊まれるようなアテは無い。
呆然と立ち尽くすあたしを見て、常磐先輩は大きな溜息をついてから、言った。
「そのまま野垂れ死にされても困る。泊まるんだろ?来い」
「ええっ!?いやアレはその、先輩の嘘に乗っかる感じだったので……」
「ああいう風に誘導させたのは俺の責任だ。まあ、それでもホームレス生活がしたいと言うのなら俺は止めないが?」
……確かに。今のあたしにはお金も何も無い。このまま放置されたら今日は野宿することになってしまう。
「もしホームレス生活がしたいならそういうのに詳しい知り合いはいるが……」
「……お邪魔します」
「賢明な判断だな」
ホームレスの生活に詳しい知り合いとやらが少し気になったが、外で寝る勇気はあたしには無い。申し訳無いがここはお世話になるしかないだろう。
だけど、そうなると問題となることがひとつある。
「あの、着替えとか……明日の制服とかも……」
そう。今日泊まりの予定なんて無かった訳だし寝る時のパジャマや下着の替えなんか当然持っている訳が無い。
それよりも次の日は学校なので、制服が無い方が困る。
「ああ、それはこっちで手配してやる」
「えっ、手配って……」
まさか常磐先輩には女性物の服を集める変態的な趣味が……?いや、それとも女装癖があったり……?いやいやそれとも彼女が居て、その彼女の私物が家に置いてあるから大丈夫ってこと?
……うーん、一番現実的なのは三択目だと思うけど。
「何を考えているか知らないが、俺には変態的な趣味も恋人も居ない」
否定されてしまった。というか、何考えてるかしっかり分かってるじゃないですか……!
「第一俺に恋人がいたらあの嘘はつけないだろ」
「いや、部活動に理解ある彼女さんなんだなあと」
「そんな奴は存在しない」
……そっか。彼女は居ないんだ、とあたしはほっとする。……ん?何で今、ほっとしたんだろう。
「とにかく、お前は何も心配する必要は無い」
「まあ、そういうことなら……」
迷惑をおかけします、と一言付け足してぺこりと礼をする。
「……兄と違って、妹は育ちが良いらしいな」
「やっぱり……兄のこと根に持ってます?」
「さあな。さっさと行くぞ」
その後、彼に連れて行かれた先が女子禁制である男子寮で、あたしはバレないように慎重に侵入することになってしまった……。




