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シン・ヨロズブ  作者: 有氏ゆず
第四話 お泊まりパニック!
26/153

4-1




前回までのあらすじ。

あたしは知らない間に常磐先輩と付き合っていたらしい。




「……って、そんな訳な……っ!」


そんな訳ないと否定しようとしたところで、常磐先輩に口を塞がれる。


「話、合わせろ」


耳元で囁かれ、不本意ながらもビクリと身体が反応してしまう。


「だ、だめです。兄は外面はいいから……!」


口を塞がれながらもモゴモゴと小声で喋る。だめ。これ以上、常磐先輩に迷惑をかける訳には……。




「……早く彼女と二人きりになりたいので、もう良いですかね。お兄さん」


え!?ここで敬語を使っていくの……!?

そして、流石にあたしも彼のやりたいことは分かった。

常磐先輩は兄に対して不快感を抱いたのだ。そんな思いをさせてしまって申し訳なく感じながらも、あたしも彼の嘘に乗っかることに。


「き、今日はあたし、彼の家にお泊まりする予定だったんです」

「はあ!?彼氏がいるとかお前言ってこなかったじゃねえか!それに家のことはどうするんだよ!我儘言うんじゃねえよ!」


兄に大きな声で怒鳴られ思わず身体が震えるが、常磐先輩が背中をポンポンと叩いてくれる。……まだ短い付き合いではあるが彼は言われっぱなしの人間ではないのは知っている。




「いや、アンタ恋人がいるとかいちいち親に報告してるのかよ。結婚報告ならともかく、そういうセンシティブな話題まで何でも知りたがる家族とか気持ち悪過ぎるだろ。異常だよ」


それあたしも思ってたことだ……!

ああ、やっぱり常磐先輩は遠慮無しにバッサリ斬り込んでくれる。普段はその物言いが恐怖でしか無かったが、今だけは物凄く頼り甲斐がある……!


「……はあ?これはうちの教育方針だ。他人のお前に口出しされる謂れはないだろうが」

「まあそれに関してはクソ気持ち悪い家族だなって思うだけで俺が口出しする権利は無いのかもしれない。クソ気持ち悪い家族だとは思うがな」


二回言った!!やっぱりそうだよね!プライバシーも何も無い家族とか気持ち悪いよね!ちょっとスッキリした!


「それと、家のことはどうするんだよ……だっけか?そんなのアンタがやればいいだけの話だろ。歳下の妹が出来るようなことなら兄であるアンタにとっては尚更造作もないことじゃないのか。……まさか自分が出来ないようなことを妹にやらせている上に偉そうな物言いが出来る程厚顔無恥では無いだろう?」


正論だ。兄に口を挟ませる隙など無く、常磐先輩はどんどん詰めていく。この人、1言われたら100返すタイプの人間だ……!


「……ああ、それとも自分は妹に出来ることすら出来ない無能な兄ですっていう自己紹介かな。それはわざわざどうも。名乗るのが遅くなりましたが俺は妹さんとお付き合いさせて頂いている……」




「宵子ッ!!」


常磐先輩が自己紹介する前に、兄はあたしを怒鳴りつけた。長年支配されていた恐怖でまた震えそうになるが、常磐先輩がもう一度背中を軽く叩いてくれたのですぐに落ち着きを取り戻す。


「め、迷惑をかけないようにしろ……!」


……どうやら兄は常磐先輩に口で勝てないと判断したらしい。余計なことを言うとまた正論責めで返されることが分かったから、逃げることしか出来なかったのだろう。まあ、口で喧嘩出来るような利口な人では無いからなあ……。


「成程。今のは人の話も最後まで聞けないような奴という自己紹介か」

「……っ!!」


さ、更に追い討ち……。しかし今日の常磐先輩、いつも以上にノリノリな気がする。眉間に皺は寄りまくってるので不快感マックスなのかもしれないけれど。


そして兄は最後に「チッ、クソが!」と吐き出して、イライラした様子を隠そうともせず去って行ったのであった。











「……で、アレの何処が外面が良いって?」


兄の後ろ姿を見送った後あたしを解放し、常磐先輩は呆れたように溜息をついた。


「す、すみません……」

「軽くつついただけでこれだ。アレに騙されてるような奴らも同レベルの人間ってことだろ」


居なくなった後もしっかり毒を吐いていく。この人を敵に回しちゃいけないなと改めて思った。




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