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やっぱり常磐先輩……あたしを庇ってくれたのかな。
「……はっ、何だよ百面相女」
チラリと常磐先輩の方を見ると、鼻で笑われたので、やっぱりあたしを馬鹿にしたかっただけかもしれない。……助かったのは事実だけど。
「じゃ、俺と零士はこっち方面だから。ちゃんと九条を家まで送ってやれよ、鎌実」
暫く四人で歩いていたが、犬飼先輩と鮫島先輩はここから逆方面に帰るらしい。まあ、二人はお付き合いしているようなので、これからは二人でデートの予定なのかもしれないけれど。
「何ならそのまま二人でデートしちゃってもいいと思うぜ!」
「ええっ!?」
からかってくる犬飼先輩に思わず顔を赤らめてしまう。常磐先輩の方を見ると顔を顰めていた。あっ……眉間に皺が寄ってる……。
「しない。……ほら、とっとと帰るぞ」
「……はい」
本当はこの楽しい気分をもう少し抱えておきたかったから、家には帰りたくなかった。
だけど、あたしには早く帰らなきゃいけない理由がある。
……家族が、特に兄が帰って来る前に家に居なければいけないからだ。
前髪を上げて、こんなに可愛い服を着ているところを見られてしまったら何を言われてしまうか分からない。だから、帰りたくないけれど急がなきゃ。自然と歩みが速くなる。
「……おい、速いぞ」
「あっ……ごめんなさい」
常磐先輩に呼び止められて、足を止める。あたしは相当な速度で歩いていたらしい。だって、時計を見るとそろそろ家族が帰ってきてしまう時間だから。
「どうしたんだ、門限でもあるのか?」
「まあ……そんなところです」
「まだ4時だろ。早過ぎないか?」
「あ、えっと……今日はあたしが食事当番なので……」
それらしい言い訳を口にする。早く、早くしないと。特に兄に見つかってしまったらあたしは……。
「……あ?宵子か?」
そして、悪い予感というのは、当たってしまうものなのだ。




