12-2
「こ、降霊術!?……いたっ」
びっくりしすぎて思わず大きな声を出してしまう。ああ、傷に響いちゃうのに。
「……うん。今まで出会ったうちは、片割れである棗の身体にうちの魂を降ろした状態のうちなんよ。この通り、うちはひとりやと全く歩けへん身体やから……」
……ああ、今までのはお兄さんの身体を借りていたから声とか身体が男っぽいなと思ったんだ。だから、まふゆさんの性別が曖昧だった。
それに比べて今目の前に居る彼女はどう見ても女性だということが分かる。
「うちは死んでる訳やあらへんから、長いこと身体から離れる訳にはいかへん。ほんまに死んでまうからね。せやから降霊術には時間制限があって、一日一時間くらいしかできひんのやけどね」
前に言っていた時間切れとは、そういうことらしい。確かに生きているのに自分の身体から長い時間離れるのは良くないだろう。そもそも、生きている人間の魂を降ろす行為すら良くないことかもしれない。
……だからこそ、気になった。
「……あの、ちょっと聞きたいんですけど。どうして降霊術を使ってまで外に出なければならなかったんですか?」
単に「外に出られなくて退屈だから」とかそういう理由じゃないと思う。だからあたしは聞いた。
「せやねえ……その問いに答える前に、言わなあかんことがあるんよ。……居るんやろ?入っておいで」
「……えっ?」
まふゆさんはあたしから目を逸らし、その目を病室の出入口の方へと向ける。
暫くその状態が続き、沈黙に耐えきれなくなったあたしが口を開こうとした時だった。
「……何故分かった」
扉がガラリと開き、恐らく外で待機していたのであろう常磐先輩が現れる。
「と、常磐先輩!?……痛っ」
「……!馬鹿、無理するな。ちゃんと寝ていろ」
彼は慌てて部屋に入り、ベッドに腰掛けていたあたしを半ば無理矢理寝かせてきた。
「……あう。今お話聞いてたから……」
「寝たまま聞け」
「それだと失礼じゃないですか」
「知らん。コイツ相手失礼しろ」
「ふふ、うふふ……!」
あたしと先輩のやり取りを見て、吹き出すまふゆさん。そんな彼女に対して先輩はあからさまに不機嫌そうな様子を見せた。
「……何だ、見世物じゃないぞ」
「うふふ、堪忍ねえ。あまりにもかいらしかったから、つい」
口を押さえながら上品に笑うまふゆさんを見て、先輩は不愉快さを隠すこともなく思い切り舌打ちをする。
「……まあ、これで役者は揃ったわ。この前時間切れで常磐さんに言えへんかったことあったさかい」
「ああ……アレか。逃げた訳じゃなかったんだな」
「扉越しに聞いてたんやから、うちの事情……降霊術のことは分かったやろ?……盗み聞きとはええ度胸してはると思うたけど……」
「煩い。わざと聞かせたんだろうが」
「ふふ、ご明察やね。仕方ないやろ?二回説明するんとか面倒やし……」
な、なんかメタ的な感想が入った気がするけど、ここはスルーしておこう。それよりも今はまふゆさんの話をちゃんと聞くべきだ。
「ほな、何でうちが奉日本の事情に詳しいんか……話させて貰うわ。この話をせな、さっきの九条さんの問いには答えてあげられへんから……」
「前置きはいい。さっさと話せ」
「まあまあ慌てへんの。今回は時間切れとかあらへんから、ゆっくり話しましょ」
そう言って、彼女は語り始めた。




