11-9
「……悪魔さんよォ、落ち着きなァ」
目で追えないくらいの速さで男が飛び出し、常磐先輩を押さえつける。
「あ、あなたは黎一郎さんっ!?」
「おうサヨコ、久しいな。髪切ったのか、似合ってンぜ」
先輩を押さえつけながら片手を上げて笑う黎一郎さん。いや力強すぎでしょ……!助かったけど思わずツッコミを入れてしまう。
「……邪魔だ!!」
「惚れた女の前で我を忘れるんじゃねェ。怖がってんのが見えねえのか」
「……っ!?そうだ、無事か……!?」
「は、はい!あたしは無事です!!」
肩の痛みを我慢しながら答える。いつもの先輩に戻ってくれたのかな……?
「そ、そうか……良かった……」
あっ、ほっとした顔してる。優しい顔だ。良かった……もう先程のような殺気は感じられない。
「……父さん、生きてる?」
「あらあら……こんな姿になってしもて。可哀想やねえ」
常磐先輩が落ち着いたところで隠れていた会長さんと……まさかの棗さんまで現れた。いや、この話し方はまふゆさんの方、かな?
「生きているけど……気絶しているみたいだね」
「こんなんでも死なれたら困るさかい、はよお医者様呼ばんといけんね?」
「……ああ、勿論だよ」
何だか妙に親しげだ。この二人は知り合いだったのだろうか。
「はあ……それにしても会長さん?うちはあの子……九条宵子には一切危害を加えさせないって約束で、協力したつもりなんやけど?」
「それについては私の誤算だ。本当に彼女に怪我をさせるつもりなんて無かったんだよ」
「ふうん、誤算ねえ……。まあ、実際九条さんは怪我してはるわけやけど?どない責任取ってくれはるの……?」
ま、まさか会長さんが責められてる!?
止めないと。だって会長さんには思いっきり止められていたのにあたしが無茶しちゃった訳で。まふゆさんがあたしの為にどうしてここまで怒ってくれているのかはわからないけれど。
「ま、待って!!これは会長さんのせいじゃなくて、あたしが勝手に……っ!!」
二人を止めようと思って立ち上がろうとすると……ぐらりと視界が揺れた。立ちくらみだろうか。
「……!?サヨ!!」
あたしの異変に最初に気づいてくれたのは、多分だけど常磐先輩だと思う。声的に。
どうして曖昧なのかというとあたしの視界がぼやけて、何も見えなくなっているからだ。
「ちょ、宵子ちゃん!?」
「九条さん!?」
「……まァ、そうなるわな」
……ああ、そっか。あたし、撃たれてたんだ。結構な量の血を流したっぽいし、貧血を起こしてもおかしくない……。
だ、だめ……もう、限界……。
襲い来る猛烈な睡魔に耐えきれず、あたしは意識を手放した。
第十二話に続く……




