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「……私としては、宵子ちゃんに無茶はして欲しくないんだけどなあ」
「あら、でもこの子……もう覚悟は決まってるみたい。何言っても無駄じゃない?」
その通りだった。あたしがスパイになったところで出来ることはたかが知れているかもしれない。だけど、常磐先輩が危険だって分かってて、あたしだけ逃げるのも嫌だ。
「中に入り込むなら、俺達が協力します。だからもう、良いんじゃないですか?」
「もう、源氏くんに言われたら何も言い返せないじゃないか。ほんと、どうして私の仲間は皆こう一度決めたら頑固なんだか……仕方ないなあ、もう」
どうやら、会長さんも覚悟は決まったみたいだ。
「再度、名乗っておくね。Lenaは芸名だから。わたしの名前は蝶名林レナ。これからよろしくね」
「俺は楪光源氏です。本名をそのまま芸名として使ってるんで。よろしくお願いします」
「あ、あの、というか今思い出したんですけど……まさか、この前電話で話した楪さんって……」
「……ああ、俺のことですよ」
……やっぱり!あたし、芸能人と喋ってたんだ!何であの時気づかなかったんだろう!というか今はその芸能人が目の前にいる訳だけど!
「あ、あうう……」
「どうしたの、変な声出して」
「い、いえ、改めて今自分が置かれている状況が凄いなあと実感しまして……」
「奉日本家の内部戦争に巻き込まれている形ですからね。俺から見ても凄い状況だとは思いますよ」
いや、それも凄いことなんだろうけど。奉日本家の次期当主と、国民的アイドルと、奇跡の美少女に囲まれている状況があまりにも凄すぎる。
「とりあえず、変装した九条さんに適当な設定でも与えてもらえれば後は俺とレナさんで何とかしますよ」
「うう……これ以上源氏くんに迷惑はかけたくなかったんだけど」
「何言ってるんですか。俺は晴臣さんの為だったら何だってやりますよ」
「げ、源氏くん……!うう、無茶はさせたくないのに源氏くんの頼もしさとかっこよさに心が折れそうだ!」
「どうぞ折れてください。そして、俺に任せてください」
「源氏くん……!好き……!」
……な、なんか会長さんと源氏さんの間にピンクのオーラが見える気がする……!
「……はあ。また始まった。暫くはこのままね」
「な、慣れてるんですか!?」
「ええ。いつものことよ」
……どうやらいつものことらしい。
「そうだね……身寄りがない、児童養護施設で育った男の子だという設定を与えるよ」
「だ、男装しろってことですか……!?」
二人は散々イチャついた後、会長さんが真面目な顔でこちらを向く。というか、いきなり真面目モードにならないで欲しい……!
「だって性別は変えてしまった方が疑われないだろう?それと名前は父さんから貰ったものを名乗って欲しい」
「わ、わかりました。なんとか頑張ります……!」
……そして、あたしの髪に鋏が当てられる。
「じゃあ切るよ。……いいね?」
「はい!どうぞ、思いっ切り!」




