11-5
……大切な人?
そんなこと言われても信じられない。だってあたしと会長さんは今回初めて顔合わせしたんだもの。……まあ、実際はパーティーの時だったみたいだけど、大切だと言われるほどの関係値ではないことは確かだ。
「君は私の…………友である鎌実くんの心を溶かしてくれた、大切な人だからね」
「常磐先輩と、仲がいいんですか?」
「まあ、向こうからは嫌われてるけどね。私にとって彼は大切な仲間だから。そんな彼を変えてくれた君も、もう私の仲間みたいなものなんだよ」
胡散臭い……。でも、会長さんが常磐先輩のことをすごく気にかけていたのは、何となく分かる。
「それに、私は鎌実くんと宵子ちゃんを守りたい派だから父に反発してしまってね。父からしたら私のことが目障りだろうね」
確かに、この人は本家当主である父親と対立している。だから実質今は奉日本家の敵みたいなものだ。わざわざあたしの命を狙うことなんてしないだろう。
「……だから私は、暫く双子の弟である明臣に成りすまして姿を消そうと思う。相手が父である以上は危険なやり方だけどね。でも相手は奉日本の本家当主なんだ。この世界の何処にも安全な場所なんて存在しないんだよ」
……ああ。何となく分かった。髪を切らないといけない理由。
「あたしも……別人に成りすませってことなんですね……?」
「うん、その通りさ」
この世界に安全な場所なんて存在しない。だったら一番安全な方法は、隠れるよりも別人になって堂々としていることだろう。
……もう、それしか自分の身を守る方法は無いのだ。
「……わかりました」
本当は……切りたくなかったけれど。我儘を言ってられる状況じゃない。
「理解してくれて、助かるよ」
だけど、あたしだけじゃなく常磐先輩の命も狙われていると分かった以上、ただ逃げる為だけに変装するのは御免だった。
「あの、それで提案なんですけど……あたし、奉日本の本家側の人間として潜り込むことは可能ですか」
「ええっ!?」
今度は、会長さんが驚く番だった。




