表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
両想いになったばかりの親友を巻き込んで異世界に召喚されました。彼女の超遠距離恋愛はどうなりますか?  作者: ゆうき けい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/222

異世界 48

「橘花!我のモフモフがよだれだらけじゃ~」

「橘花~。お腹がすいたのじゃ~。」

「すぴぴ・・・橘花、我をモフるのじゃ・・・。」

「「「「・・・。」」」」

「なー、これ、一回、絞めて良い?」

あの魔物の島と思われていたニーラカーナが巨大な亀の魔物とわかり、そこから現れた強大な兎の魔物の襲来から、一週間。

ヨハン王子とクラウス・フォン・アインバッハ青騎士隊二席は、北の辺境伯ネルソン・フォン・ノーザンライツと共に王都に旅立って行った。

そして、橘花達も領都のプラハ=ハウゼン孤児院に戻ってきていた。その一室で、お昼寝をする年少の子供たちに交じって、真っ白いカーバンクルが、気持ち良さそうに橘花の膝を枕に眠っていた。しかも、へそ天で寝言まで呟いている。魔物の風上にも置けない気の抜けた態度だ。


そのカーバンクルの額に、角は無い。取引に基づき、角の魔力で心臓を修復した後、インヴァスの角はヨハン王子の手に渡った。額には角の名残として、扇形の基部が残るのみだ。ここからまた角が育つのだ、とカーバンクルは言った。

『鹿の角みたい。』

そう思ったのは内緒だ。秋の繁殖期に興奮した雄が仲間や観光客を傷つけないように、奈良で行われる鹿の角切。一度、見に行った事を思い出し、橘花はそこだけ毛の薄くなったカーバンクルの胸をモフりながら小さく笑った。


今やカーバンクルは孤児院の人気者だった。誰もが、彼を撫でたり、抱き上げたり、頬ずりしたくてうずうずしている。

当初は、あのレイバンの右腕を食いちぎった恐ろしい姿が焼き付いていて、孤児院どころが領都に連れて行く事にも反対だった。契約者として、橘花がしっかり命じれば、大丈夫だと繰り返し説明された所で、安心できるはずもなく、途方に暮れた。

しかし、そんな橘花にレイバンが何でもない事のように言ったのだ。

「チビ達は、今のこいつよりずっと強いぞ。」


魔物の島の対岸にある辺境伯領では、子供ですら戦う術を身に着けている。特にこのプラハ=ハウゼン孤児院では、赤騎士隊隊長イザークや特攻隊長レイバンの影響もあり、戦闘訓練が遊びの中にも取り入れられていた。


「こら、我の耳を掴むな!お前たちは我の羽耳を何と心得る。これは、至高にして至上。最高級のもふ羽ぞ。待て、待てっ!そんなに強く引っ張っては抜けるではないかぁー。」

実際、初めてカーバンクルを連れて来た時の子供たちの反応は、狩った獲物に対する狩人のそれだった。インヴァスがヒトの言葉を話した事で、その表情が驚愕に変わり、それ以降は、もう新しいおもちゃかペットをもらったようなキラキラした瞳になった。

それはもう、あんなに不安に思っていた橘花の心配が全くの杞憂であった事を、橘花は元よりヨハン第一王子もクラウスも乾いた笑いで諦めるしかない程だった。

子供たちに追いかけまわされ、やっとレイバンの手で助け出された時、インヴァスは全ての意志が失われたかのように、ぷらーんとレイバンの腕にぶら下がっていた。


そのレイバンの右腕は、今、肘までの黒い革手袋で覆われている。


結局、元の腕をそのままつけるには、食いちぎられた傷口の状態が酷すぎて不可能、新しい腕を生やす(!!?)には、インヴァスの魔力が足りなかった。

落ち込む橘花に、インヴァスは、

「我の魔力が戻れば、ヒト族の小童の腕など、一本と言わず、二本、三本生やしてやるぞ。何なら、ヒト族の頼りない腕ではなく、逞しい熊の腕でも竜の腕でも何でも生やしてやろう。」

と勘違い甚だしい言い訳をして、胸をはった。

「お、竜の腕、良いな。」とレイバンもその気になって、青騎士のヘレナに叱られる一幕もあり。


「結局のところ、我とヒト族は相いれないのだ。我がお前の腕を治すと言った所で、素直に受け入れられまいよ。」

静かな声でインヴァスはそう告げる。

「魔物とヒトの間に信頼関係など、成り立つとは考えぬことだ。我がここにおるのは契約に従ってに過ぎぬ。」

ジワリと広がった緊迫した雰囲気をレイバンの明るい声が蹴散らした。

「ん、じゃ、ま、格好いい竜の腕は、後の楽しみに取っておくとして。取り敢えず、チビ達が心配しないよう、俺は手袋でも着けておくわ。風魔法でふくらませておけば、触らなきゃわからないだろ。」


そんな簡単な事ではない、とは思ったものの、早速、革手袋を探しに行くレイバンの後ろ姿に、橘花は彼女と孤児院の弟妹達に対する気遣いを見て、何も言えなくなったのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ