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両想いになったばかりの親友を巻き込んで異世界に召喚されました。彼女の超遠距離恋愛はどうなりますか?  作者: ゆうき けい


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異世界 38

ステッキは黄金色の光を発しながら、結界を溶かしていく。そうして出来上がった10cmほどの空間に、兎は両手をかけ、思い切り左右に引いた。メキメキと言う固く張り合わせた板をはぐような音を立てて、結界は縦に裂けていく。

「ああああああ、この我のふわふわもこもこの毛をもってしても防ぎきれない肌を焼く清浄な空気!目が鼻が喉が、呼吸をする度に、血を流しているのが分かりますかぁ!」


穴にかかっていた手は、ぶすぶすと煙をあげ、大きく広げた口から覗く牙は真っ赤に染まり、ダラダラと血が流れている。真っ赤な目から、真っ赤な涙を流しながら、白兎は結界から頭を突き出した。そして、ゴリゴリと音を立てながら、肩を入れ、腕を伸ばし、結界の隙間を広げ、こちら側にはい出てこようとしている。

「痛い、痛いです。空気が刺さるぅ。」


裂けた空間から魔素がこちら側を侵襲してくる。しかし、やってきたのは魔素だけではない。

白兎の足元や頭上を我先にと、低級の魔物たちがすり抜けていく。元々、結界は低級の魔物ならば、通過することが可能な作りになっている。全てを遮断する結界の構築には、膨大な魔力が必要だ。網目状にすることで、低級魔物は通しても強力な魔物を防ぐことを優先したのだ。低級ではあっても、魔物はいつ襲来するかわからない。その危機感を持って警戒を怠らないようにする事は、いつか必ず訪れる結界の崩壊に備える心構えを、人々に根付かせていた。


しかし今、裂けた結界から、我先にとなだれ込んでくる魔物たちは、スタンピードの発生初期を思わせた。このまま裂け目が広がれば、低級以上の魔物がやってくる。現に、魔亀ニーラカーナの姿は次第に大きくなっている。

魔物の侵食が増える程、この地の魔素が濃くなり、益々、魔物にとっての有利となる。

ここで、食い止めなければ。


誰もがそう思っていた。しかし、溢れ出る魔素に流石の騎士達も思わず、後ずさる。

橘花は、春日の乗る車椅子に取りすがって、辛うじて立っていた。膝に力が入らない。息が苦しい。何より、血だらけになりながら、それでも、自分から目をそらさず、笑い続ける白兎が恐ろしかった。


「キッカ」

突然視界が何かに覆われた。

「ちょっと、兎狩りに行ってくるから、これ預かってて。」

布越しに頭をポンポンと軽く叩かれる。

次の瞬間

「どおりゃあー!【風刃】」

裂ぱくのかけ声と共に二筋の風の刃が、魔物たちを切り裂いた。

「こっから先、通すかよ。」

双剣を両手に構え、獰猛な笑顔を浮かべて、赤い鎧の騎士が魔物の群れに向かって駆け出した。右手の剣を振りぬくと、ネズミの様な魔物が何匹も宙に舞った。左手の剣を振りぬくと蝙蝠の魔物が地に落ちた。


「俺の大事な女をそんないやらしい目で見るんじゃねぇ!」

いつもなら翻る赤いマントは、今、橘花を頭からすっぽり覆い、白兎の魔眼から護っている。同じ赤でも鮮烈な燃え上がる紅の赤い髪が、橘花の見つめる先で舞っていた。

「ばん。」

赤騎士隊特攻隊長レイバン・プラハ=ハウゼンは、威圧と嘲笑を振りまきながら、魔物の群れの中で双剣を振るっていた。


「戦闘開始!各自散開して魔物を狩れ。兎は私とレイバンで抑える。ヘレナ、辺境伯に連絡。神子様を護れ!クラウス、彼女たちを連れて下がれ!」

杖を頭上に掲げ、ヨハン青騎士隊隊長は命じた。バリバリバリと雷が結界に沿って降り注いだ。



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