現世 27
〈ヤマト!これは面白いな。続きはないのか?〉
小間の茶室に用意された場違いな大型液晶画面の前で、満面の笑顔で彼を迎えた異世界人に、大和は偽ることなく、大きなため息をついた。
彼は今、ロボットアニメに夢中だ。
更なる魔法陣の解析ためには、流石に会話無しでは不可能だ。かと言っていきなり普通に話しかけるわけにはいかないから、こちらの言葉を映像で学んでもらおう、と言う風を装っている。とは言え、ニュース報道やドキュメンタリー番組、トレンディードラマなど、不必要にこちらの世界の事を知られるのもよろしく無い。そこで、大和が思いついたのがロボットアニメだった。巨大ロボで戦う少年少女の物語は、今でこそヒューマンドラマや成長物語を内包しているが、昔の作品なら勧善懲悪、ドカン、ボゴンでオラオラのヒャッハーだ、とは一体、誰のセリフだったか。
一話30分の中で、まともな会話一つないバトルシーンばかりであっても、朝から晩まで夢中になって見ていれば、単語の一つや二つは頭に入るのだろう。
少しずつ、ギュンター王子は日本語を混ぜて話すようになり、以前の尊大さは影を潜めていった。
今日も、大和がやって来ると、まるで友人が来たかのように迎え入れた。
『調子狂うよなぁ。懐いてくれちゃって。』
good cop役の大和は、とにかく、ギュンターには笑顔で接する様にしていた。彼にも思う所があったのか、大和には異世界人も笑顔をみせていた。
最初の内はかなり胡散臭い笑顔だったが、それもだんだん心からの笑顔になってきていた。
「ギィ。いつまでもアニメ見てないで、ご飯だよ。」
大和は笑いながら、折り畳みの座卓を押し入れから取り出した。
「ごはん!なに?」
「あ、日本語だ。ギィ、覚えたんだね。そう、ごはんだよ。今日は、ギョーザ。」
「ギョーザ?」
座卓の上を拭いて、テキパキと夕食を並べていく大和。
「うちのギョーザはね。取り敢えず、ある野菜を適当に詰めるから、毎回味が違うんだよ。で、おかずはギョーザだけ。このごはんの時はギョーザと白米以外は食べないんだ。」
大皿に山と盛られた焼き餃子に目をまん丸くするギュンター王子。
箸はまだ許されていないから、カトラリーはトングとスプーン。
「醤油をちょっとつけて食べるんだよ。じゃあ、温かいうちに食べてね。」
そう言って立ち上がろうとするヤマトに、ギュンターは思い切って話しかけた。
「ヤマト、まつ。」
「え?何?」
「ヤマト、ここ、いる。〈あー、通じているのか、これは?〉おれ、たべる、まつ。」
「何で?」
不安げな表情は、意図して作っている?大和は探る様にじっとギュンター王子の顔を見つめた。




