現世 25
獣羅行
ジュラに行く
手始めに、大和と武流は、異世界に荷物を送る為の魔法陣の構築を行う事にした。目的地:獣羅。これは国名なので表音文字表記。行くを金文で描き、魔法陣の中心に配置する。その外に、各種条件。条件を絞れば絞るほど、魔法陣の起動に制限がかかるが、その分、ピンポイントで無駄のない構成になる。より少ないエネルギーで陣を運用する事が出来るはずだ。一番外側は、この魔法陣を魔法陣たらしめる力の流れを規定した部分。武流の記憶にある、春日と橘花を攫った魔法陣の外円そのものだ。描かれた膨大な量の紋様が何を意味するのか、その解析は未だ手付かずだ。
取り敢えず、目的地を近場に設定して、軽い物から転移させてみる。
中心円:目的地=床の間
内円:各種条件=即時、移動、メモ用紙
外円:魔法陣構築式
大和が巫力を注いでも、前回までの様に、キン、と言う空気が震えるような音は鳴らなかった。外円の紋様から、煙のような物が立ち昇ることも無い。
仕方なく、ギュンター王子の手を借りる。
文字通り、彼の意志に拘わらず、武流が押さえつけて、魔法陣の書かれた紙の上に、ギュンター王子の手が乗せられる。
途端、キン、と高音が響き、ゆらりと煙があがる。それは外円を一周し、メモ用紙を包む込むと、次の瞬間に霧散した。魔法陣の中心には何もなかった。
恐る恐る振り返った大和たちの目に、床の間にそれまで無かった何かが置かれていた。武流がゆっくりと近づき、手を伸ばす。
「成功だ・・・。」
「やった。やったぁ!」
喜ぶ二人と呆気にとられるギュンター。
《これは、転移陣なのか?見本となる神子召喚陣があったとは言え、こんな短期間でここまで・・・。》
「よし、次々行くよ~。」
大和はその言葉通り、メモ用紙に文字を書いたもの、もっと重量のある物、時間を1分後など何枚もの魔法陣を描いた紙を取り出す。外円は魔法陣構築式なのでそのままに、内円と中心円を色々変えて、何日にも渡り、彼らは試行錯誤を繰り返した。




