表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
両想いになったばかりの親友を巻き込んで異世界に召喚されました。彼女の超遠距離恋愛はどうなりますか?  作者: ゆうき けい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/222

異世界 28

パタンとかすかな音がして、馬車の扉が閉ざされた。最後に見えたのは深く頭を下げた白騎士の姿だ。

橘花はふーっと深い息をつく。彼は、毎晩、彼女が外に出る時に少し離れた所に立っている。そうして、橘花が中に戻ろうとした時に、そっと近づいて、一輪の花を差し出すと、馬車の扉を閉めるのだ。施錠の音を確認し、暫く、その場に留まり警護をする。朝にはいなくなっているので、日付が変わる前には別の騎士と交替しているらしい。

白騎士からもらった花は、春日の枕元に飾られている。毎日、違う花をくれるので、統一性は無いが賑やかな花束が出来ている。何日か経って、元気の無くなった花もあり、捨ててしまってよいのか、ちょっと悩む。

昔から、花をもらうのは好きなのだが、その後、どうしたら良いのか困る。ドライフラワーにした事もあったが、どの花もドライフラワーに出来る訳では無い。武流は、不思議そうな顔をしたが、橘花には折角もらった花をしおれたからと言って、ゴミ箱に捨てるのはどうにも心が痛むのだ。

なので、絵に残すことにしていた。

スマホで撮るのは簡単だが、描いている間中、もらった時の幸せな気分が続く。

そうして、何枚もの花の絵を描いた。


「絵が描きたいな。」


馬車の中で過ごさなくてはならない一日の大半を、無為に過ごすのは勿体無い。


あれから、何日が立ったのだろう。

今までは、嵐の様に毎日が過ぎて行ったが、ここに来て、いきなり、ぽっかり何もする事が無くなってしまった。言葉の学習はしている。けれど、一番会話の成立する青年と最後に会ったのはいつだろう。彼の持つ辞書の様な物を借りられれば良いのだろうが、その交渉すら出来ない。


春日はまだ、目を覚まさない。

彼女の手に握らせたスマホには、何件がメールが届いていたが、ロックがかかっていて、橘花では開ける事が出来なかった。待ち受け画面の武流をずっと見ていたいけれど、いつ電池が切れるかと思うと、朝夕の挨拶の時しか、開ける事は出来なかった。

自分のスマホはとっくに電池切れだ。春日のスマホがいつまでも100%なのは異常だ。だからと言って、それがいつ0%になるかは、わからないのだから、ケチケチ使うに越した事は無い。


山盛りのクッションに囲まれて眠る春日は、時々、眉間に皺が寄っている。つんつんと軽く突いて、皺を伸ばそうと指で左右に広げていると、変な顔の出来上がり。つい、吹き出してしまって、勢いで涙が零れた。

「春ちゃん、早く、目、覚ましてね。・・・。寂しいよ。」

クッションに顔を埋め、そのまま春日に抱き着いた。馬車の窓、カーテンの隙間から見える夜空には、見知らぬ星々が瞬いている。


一日の内、本当に僅かな、眠りにつくまでの、自分だけの時間。

「お母さん。お父さん。心配してるよね。」

自分が目の前で消えた事を武流は、自分の両親に何と説明したのだろう。大和は春日と同じく状況をある程度把握しているのだろうけれど、異世界転移と説明された所で、両親が納得するとは思えない。我が身に起こっていてさえ、まだ、夢ではないかと思うぐらいなのだ。

「心配かけて、ごめんなさい。」


両親への思いとは、別な所に、もう一つ大きな思いが、橘花の心の中心にはある。

「武流さん、会いたい。」

彼が、自分の為に奔走してくれている事は全く疑っていない。だから自分も元の世界に戻る為に、出来る事は何だろう、と考える。少なくとも、何もせず、春日の傍にいるだけではいけない。春日が目を覚ました後、役に立てるように、物事を円滑に進めるために、良好な人間関係を築いておくことなら出来るかもしれない。せめて、自分が足を引っ張らないように。春日が思うように行動できるように。せめて、周りの異世界人の顔と名前と地位、能力、それ位は、春日に伝える事が出来るようになろう、そう、思った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ