現世 21
「いいか、中心は”巫女”。中の円には”牛の月””双子満月””空””三””分割””時””じゅら””れのくし””道””開く””御使い””来る”。外の円には”王家””血””契約””成す”。」
そう言いながら、武流はその言葉に相当するであろう紋様を示していく。
「ざっと、まあ、こんな感じだな。」
更に数日後、解析結果を前に大和と武流は、今後の対応を話し合っている。魔法陣は詳しく分析すると金文の様な表意文字と先代巫女の辞書にあった表音文字が入り混じって描かれていた。先ずは、どれが表意文字でどれが表音文字なのかを区別することから始まった。中には記号としか思えないものもあり、そちらについては手詰まりだ。
「意味不明な単語が沢山・・・。それに外円の紋様はまだほとんどわかっていないんだね。」
「ああ、そうなんだ。」
溜息をつく武流に大和は寝込んでいる間にずっと考えてきたことを伝えた。
「それなんだけどさ、武流兄。この金文?って言う絵みたいな文字ね、多分、先代巫女の遺品の中で見たような気がするんだ。遺品の管理は伊勢本家でしているから、多分、蔵で。何か、日記か覚書の様な物だった。と、思う。
子供の時の事だし、絶対とは言えない。ただ、そんな昔の人の文字なんて読めなかったから、逆に絵みたいなそれが、印象に残ったんだ。」
「わかった。この際だ、徹底的に調べよう。」
一歩進んだと思うとすぐに立ち止まらざるを得ない現状に、やるせなさが募る。それでも、やるしかないのだ。武流は本家に、大和は読み解いた紋様の意味から魔法陣の魔力の流れの解析にと分担して取り組むことにした。
異世界人はこれは神子召喚の魔法陣だから、他の物を送るのには使えない、と言った。魔法陣の中心に描かれた”巫女”を示す紋様。巫女を召喚するために、綿密に刻まれた紋様に二重に囲まれ、まるで鳥籠のようだ。
『春日?君を感じられないよ。』
送ったメールに返事が来ない。それどころか既読が付かない。『僕の声は届いているの?』
もし、春日が死んでしまっていたなら、大和も消滅するから、生きてはいる筈。ならば、春日は春日らしく振舞っている、と信じられる。彼女は自分の心のままに動く。それが、どんなに社会通念に反していても、彼女が正しいと感じたなら、彼女にとってはそれが正しい事なのだ。
『無敵だよね。』
そんな自由奔放な彼女は異世界でも自分らしく行動してるのだろう。
「こっちの気も知らないで。」
つい、愚痴が零れた。
召喚魔法陣の紋様を解析した日本語に置き換える。
「何で、時間の設定がいるんだろう。何かメリットが無いと入れないよね。この時間に召喚すると成功率が高い?とか、召喚に使うエネルギーが少なくて済む?とか。どっちにしても、これは検証する時には邪魔になるよね。」
そう独り言ちて、大和は不要と思われる言葉を削った魔法陣も描く。
一文字一文字に巫力を込める為、かなりの労力だが、何が成功に結び付くかわからない以上、手数を増やすしかない。
『はぁ。春日がいないから他の人から巫力を分けてもらわないと、いつまで経っても終わりそうにないなあ。』
大和の脳裏にある人物が浮かんでいた。




