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両想いになったばかりの親友を巻き込んで異世界に召喚されました。彼女の超遠距離恋愛はどうなりますか?  作者: ゆうき けい


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異世界 21

赤騎士隊隊長、イザーク・プラハ=ハウゼンは青騎士隊隊長ヨハン・シュトラーゼ・サイ・フォン・ジュラの背中を睨みつけたまま、場違いな王家の馬車に向かって歩いて行った。馬車のこちら側で白騎士と青騎士が一人ずつ馬車を警護している。二人とも顔見知りだ。どうしてこいつが、と思わなくも無かったが、青騎士は、去年、入隊したばかりのひよっこ、白騎士隊隊長の何番目かの娘だ。あの貴族中の貴族らしいライゼル・フォン・メテオリンク侯爵がよくもまあ、娘を騎士隊に入れたと驚いたものだ。まだまだ、ケツの青いお子様だが、ヨハンが可愛がるだけあって、魔法のセンスは良い。

白騎士の方は確か二席。いかにも真面目で堅物な見かけをしている。割とよくヨハンが連れているのでたまに見かける事はあった。

隊は違えど、平民の隊長であっても礼で迎える態度は、悪くない。そう思い、よっ、と軽くハルバードを振り上げて挨拶を返す。血糊と細かな肉片が飛んで行ったような気はするが、知った事か。ビビッた白騎士が剣に手を掛けたらおもしれーのにな、などと考えていたら、ふっと周囲の空気が変わった。


「何だ?」


俺たちは魔物溢れる戦場にいたはずだ。しかし、今、ここに瘴気は無い。無残な死の匂いも魔物の吐いた毒や腐り落ちるアンデッドの腐臭もしなかった。


「神子様、と言ったでしょう。」

ちゃんと聞いてました?と続けて、悪戯が成功した子供の様な無邪気な顔を一瞬見せて、ヨハンは馬車の扉をノックする。小さな応えの後、扉が開いた。


〈おわり。あんぜん。〉

「討伐はほぼ終了です。後始末は後続に任せて、私達はこのまま北へ向かいます。」

ヨハン王子は、先ず、小さな寝台横に座る少女に、不思議な言葉で語りかけ、その後、侍女たちに命じると、馬車に乗り込む。

「おい、」

馬車の扉の前でどうしたものかと、イザークが困惑するのも無理はない。

ヨハンは良いだろう。自身を魔法でガードし遠距離攻撃主体の彼は、ここが戦場だとは思わせない程、完璧なシミ一つない魔法師の出で立ちだから。馬車の中とは思えない美しく整えられた調度品や柔らかな毛足の長い絨毯が敷かれた床は、魔物の返り血を滴らせた大男が踏み入れて良い場所とは思えない。


しかも、彼が声をかけた少女は黒い瞳澄んだをこれでもかと大きく見開いて、自分を見つめているのだ。

この少女が神子様だと言うのか?確かに伝承の神子は黒髪黒目で、この世界が魔物に飲まれようとした時に現れ、その源を封印する、と伝えられている。今が、その時、なのか?


「あー、勘違いするといけないから、言っておくけれども、神子様は、お眠りになっている方で、こちらの姫は召喚に巻き込まれてしまったそのご友人だ。」

用意してもらったお茶を優雅にテーブルに座って飲むヨハン王子を、イザークはギロリと睨むと、「ちゃんと説明しろ。」と低い声で言い、馬車のステップに足をかけた。

怯えた少女が思わず後退るのを苦々しく見やり、せめても、と己の半身ともいえるハルバードを護衛の白騎士に渡す。

驚いた顔の白騎士と青騎士、軽く眉を上げるヨハンに舌打ちをしたいのを我慢して、イザークは、その大きな体がなるべく小さく見えるようかがんで、少女に騎士の礼をした。

「赤騎士隊隊長イザーク・プラハ=ハウゼンだ。」

「いざーくぷらはう?」

「?・・・イ、ザー、ク」

今度はゆっくり一語一語伝える。

「いざーく?」

やや舌足らずに名前を呼ばれ、可愛らしいな、と思わず、顔がほころんだ。

「キッカ。」

少女は自分の胸に手を当て、そう言った。



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