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異世界 1

「おお〜っ。成功じゃ。神子様がお渡りなされた。」


魔法陣から黒い靄の様なものが立ち上り、それが消えた後、魔法陣の中央には二人の人物が抱き合って座り込んでいた。

体格から想像するに歳の頃は10代半ば、まだ幼い少女のようだ。


ジュラ王国は建国1000年を越えるパンケア大陸最古の王国である。そして、唯一、異世界からの神子召喚の方法を知っている国だ。

パンケア大陸は300年に一度、瘴気が溢れ、野生動物が魔物化し、人類を脅かしていた。

その度に、ジュラ王国は神子召喚によって、瘴気の浄化を行い、パンケア大陸を魔物の侵略から救ってきた。それ故、ジュラ王国はパンケア大陸一の有力国家の地位を長年保ってきた。

しかし、その優位が揺らごうとしていた。今から、50年程前、本来、瘴気が溢れ出る時代になっても、瘴気発生の報告はどこからも上がってこなかった。

最初のうち、人々は、いつ瘴気が溢れるのかと怯えて暮らしていた。しかし、瘴気発生が更に5年10年と起こらず、前回の発生から330年を迎えた頃、パンケア大陸のほとんどの民は、瘴気の発生は完全とは行かないまでも、野生動物を魔物化するだけの大規模なものはもう、起こらないのではないか、と考える様になった。


ジュラ王国の当時の国王は、神子召喚の儀を行わなくて済むことを非常に喜んだ。しかし、その結果、王国の威信は揺らぎ、これまで瘴気対策に一丸となっていた各国の間に、神子召喚が必要ないならば、ジュラ王国が、いつまでも、大陸の覇者の様な顔をしているのはおかしいと、ジュラ王国に敵対する国家が現れ始めた。


今回、瘴気の発生が起こっていないにも関わらず、神子召喚を強く主張したのは、第二王子。現国王の正腹の長子である。彼の上には妾腹の兄がおり、その優秀さで妾腹でありながら、非常に国民の人気が高かった。王位継承権を放棄し臣下降籍を長年訴えていてもそれが叶わない事がその実力を裏付けている。国際社会の中で、ジュラ王国の立ち位置が揺らぎかけている今、神子召喚を成功させ、神子の力を敵対する隣国に見せつける事が出来たら、彼は、目障りな兄を追い落として、王太子になる事が出来る。不遇な時代は、終わる。


さあ、俺の時代の始まりだ。

先ずは、この者達に言うことを聞かせなければならない。自分の容姿には自信がある。男女を問わず、自分が微笑みかければ、皆、頬を染めてうっとりするのは、知っている。

とっておきの笑顔を浮かべ、右手を差し伸べる。剣を持つ利き手を差し出すのは、異心の無い証だ。

猫撫で声で語りかける。

「よく来たな、神子。俺はこのジュラ王国の王子、ギュンター・シュバルツ・フォン・ジュラだ。折角、来たからには、精々、俺の役に立ってくれ。」

ここでにこりと微笑む。


ギュンター王子の言葉に、その場に居合せた者たちは、一人を除いてギョッとした。それに対し、「どうせ言葉は理解できないだろう?」と王子は平気な顔で返す。表面上の態度が丁寧なら、言葉の内容など、何を言っても通じなければ構わない、と明言する。それに対し、一人頷く老人。

「神子は俺の城に連れて行く、」

と続けたところで、顔の横を何かがものすごい勢いで通り過ぎた。

それが、魔法陣の中の神子から投げつけられた物だ、と気付いたのは、後の護衛騎士がそれを弾き、自分の前に守るように立ってからだった。


「何ふざけたこと言ってるのよ、このすっとこどっこい。誰が“折角、来た“ですって?これは、誘拐。紛れもない犯罪よ!」

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