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両想いになったばかりの親友を巻き込んで異世界に召喚されました。彼女の超遠距離恋愛はどうなりますか?  作者: ゆうき けい


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異世界 54

ぶわっと一気に部屋中に殺気が溢れた。

レイバンは橘花の膝の上の魔物を叩き落とし、彼女をさっと抱き上げるとソファーの後ろに一足飛びに移動した。イザークも瞬時に車椅子ごと春日を抱き上げ、その手にはいつの間にか短剣が握られている。

「いたたた。酷いな。我は何か気に障るようなことを言ったか?」

カーバンクルはべちゃっと床に落とされ、全く訳が分からない、と言う顔で起き上がり、周囲を見回した。

「・・・本当に人の言葉を話すのだな。」

低いうなり声のようなイザークの声。

「話すか、あほう。お前たちの低俗な頭にも理解できるよう、変換してやっているだけだ。」

二人の赤騎士の本気の殺気を意に介することなく、カーバンクルは後足で羽耳を撫でつけ、前足で顔を洗った。

「ほれ、橘花。我を抱くのじゃ。」

そのまま前足を橘花の方に伸ばして後足で立ち上がり、小さな子供が抱っこをせがむような姿勢をとる。


しかし、レイバンは橘花を抱く腕を緩めず、イザークの殺気も収まらない。

「やれやれ、橘花にかかわる話をするのに、その本人に話が正確に伝わらなければ、どうにもならんであろうに。まこと、ヒト族の愚かさと言ったら。たかが、復讐の一言にここまで怯えるとはな。」

はっと馬鹿にした息を吐いて、センはぴょんとソファーに自ら跳び乗った。

「で?復讐の何が気に入らない?」

「ばん、おろして。はなし、しよ。」

「・・・わかった。」

レイバンは、ゆっくり、イザークの横に移動し、そこで橘花を下ろした。

イザークも春日の車椅子を床に置く。

橘花は眠ったままの春日の手を握りしめた。

〈セン、今だけ、言葉の制限を解除して。〉

「やれやれ、抱っこはしてくれないのか。

では、皆。本音で語り合うとしよう。」

白兎のインヴァスだった時を思わせる役者のような仕草で、カーバンクルは器用にウインクすると、上げていた前足を折り曲げて一礼した。


「イザーク様、座って下さい。バンも。」

橘花は改めて、ここにいる人の顔を一人一人見た。

イザークの臨戦態勢は全く崩されていない。辛うじて武器を抜いていないだけで、それが何の意味も持たない事は、先程の動きが示していた。むしろ、橘花がカーバンクルから距離を置いた事で、愛用のハルバードが振るわれる確率が上がったような気さえする。

レイバンは、橘花と離れる事に抵抗を示したが、最終的に”お願い”を聞いてくれた。だが、その失われた右腕の革手袋の中は風の魔法が荒れ狂っている。いつでも、センに向けて放つ準備が整っていた。

ミランダ元女官長は、静かにこちらを見返していた。そう言えば、センの復讐発言にもその後の赤騎士達の過剰反応にも、何ら動きを見せていなかった。

その彼女が一番に口を開いた。


「復讐なされば良い、と、私も思います。」


「は?」「な?」

イザークとレイバンの驚きは二人のセンに対する警戒を一時的に解かせる程だった。

今、この場はセンの魔力で、本心が言語化される。例え、思っている事と違う事を話しても、それは二重音声になって現れる。だから、今のミランダの発言が単一で聞こえるなら、それは紛れもない本心だ。

「おいおい、元女官長の発言としちゃあ、穏やかじゃねぇなあ。(まあ、気持ちはわかるが。)」

ぎょっとした顔をしたイザークにレイバンがにやにやと言う。

「たいちょ、今の最後のセリフ、口に出すつもりなかったでしょ。ダメっスよ。今、ここじゃ、隠し事出来ないっスから。」

「ちっ。お前、やけに嬉しそうだな。」

嫌だなぁ(もちろん)そんな事ないっスよ(めっちゃおもしれー)。」

レイバンの顔にアイアンクローが見事に決まった。




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