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両想いになったばかりの親友を巻き込んで異世界に召喚されました。彼女の超遠距離恋愛はどうなりますか?  作者: ゆうき けい


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現世 48

仰向けに倒れた依り代の少女の瞳はもう何も映してはいない。しかし、その口から、これまでと変わらぬ声がする。

「すまぬな、伊勢の。この落とし前を妾に代わってつけてくれぬか?礼は八咫鏡(やたのかがみ)じゃ。」

それを最後に、少女の体は砂となって崩れた。

「全く、最初の願いを叶える約束はどうなるの?割に合わないんじゃない?どう思う、武流兄?」

「僕から橘花を奪った裏切り者を堂々と粛清できるなら、僕に文句はない。八咫鏡がもらえるなら、伊勢のご老人方にも恩を売れるだろう。」

その声は、照姫の護衛に駆け寄った白装束の中からあがった。


「ひ、武流、さん?」

「お前!何故、生きている。思い切り頭を殴った。海に落ちたはずだ!」


「はい、自白頂きました。これで、何があっても正当防衛だね。」

頭を覆っていた白頭巾を外してほいっと放る。5人いる護衛の内、3人が頭巾を外し、正体を露にすると、天正真美と側近、彼女の父親がぎょっとした。

それは、殺したはずの御影武流と伊勢一族・斎宮巫女の双子の弟の伊勢大和、そして、もう一人は見知らぬ外国人ながら金髪碧眼の目を引く美青年だった。

「結局、照姫の味方は、たった二人って訳ね。」

今や、衣だけを残したその残骸の横に膝を着いてうなだれる白装束二人を見下ろして、大和は、他は全員敵、で良いよね。この中に、照姫の為に弔い合戦をしよう、って言う人いたら、こっちに来て、と実に長閑に尋ねた。


しばらく、周囲の出方を窺うような時間が流れた。

しかし、誰もその場を動こうとはしなかった。

「人望ないねー、照姫。それとも、敵さんが上手なのかな。」

大和は鏡台に掛けられた八咫鏡を取り上げた。鏡面を天正貴志・真美の方に向ける。


鏡の中から、二人に向かって絶世の美女がにっこり笑って、口を開いた。

「「時よ戻れ、お前は美しい。」」

大和と照姫の声が二重に響いた。


「きゃあー、何これ、何なの!?」

恋人を心配する心優しき女性を演じる為に、捨てずに着けていた、武流からもらったペアの腕時計が、天正真美の左手首で物凄い音を立てた。

文字盤を覆っていた強化ガラスがはじけ、短針と長針がぐるぐると回る。秒針は立ち上がりどんどん伸びている。

そして

「うぐっ」「あ、うっ」「はっ、はっ」

天正親子に味方し、照姫を裏切った者達は、あるいは胸を、あるいは頭を、あるいは喉をおさえ、かきむしり、バタバタと床に倒れた。


「さ、この隙に、脱出しよう。」

大和に促され、武流とギュンター王子は歩き出した。突然、何が起こったかわからない、二人の護衛も、つられて歩き出す。

「ま、待て、鏡、八咫鏡を置いていけ。それは、出雲衆のものだ。」

床に情けなくも転がり、げーげーと胃の中の物を吐き出しながらも、天正貴志は大和たちに腕を伸ばす。それに対し、振り返った大和は、心なしか全身がほのかに光っている。

「そうですね、出雲衆のものです。ですから、持っていくのです。あなた達は、もはや出雲衆ではないから。照姫の命を聞かぬ者は出雲衆から追放する、とさっき、認めたばかりではありませんか。照姫は新た依り代として、僕、伊勢大和を選んだ。」

「それにこれは祭神の命を守らず僕の命を狙った事への”落とし前”の正当な報酬だ。」

武流は、床に転がる天正真美とその側近二人を冷たく見下ろした。


大和が異世界の魔法陣を研究し、作り上げた腕時計は、起動の言葉によって、装着者を含めた周囲3メートルの者達の巫力を根こそぎ奪う。それは、大和の元に送られ、彼の巫力へと変換される。それが、今、八咫鏡を持っている為か、魔法陣は周囲に波紋のように広がり、彼に敵認識された者達全ての巫力が吸い上げられている。大和はかつてない程の巫力を身に宿していた。

「「出雲は妾と共にある。」」

大和の手に持つ鏡の中の美女と大和の声が二重に告げた。

「「其方たちは破門じゃ。」」




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