プロローグ
しばらくは、1000文字前後の短め投稿です。1日2回目標です。よろしくお願いします。
「春ちゃん、元気でね。SNS毎日、あげてね。」
「わかってるって。すっごいの、あげるよ。橘花が、武流兄放ってこっちに来たくなるような奴。」
成田空港の一角で少女二人が別れを惜しんでいる。
一人は日本人形の様に真っ直ぐな黒髪と白磁の肌の楚々とした美少女。
もう一人は、ショートヘアをアッシュブロンドに染め、青みがかった大きな瞳が特徴的な美少女。
少し離れてその二人を見守る男性が二人。
「あんな事言ってるぜ、武流兄。橘花連れてかれちまうぜ。」
ウリウリ、と肘を押し付けてくる少年は、アッシュブロンドの少女と瓜二つだ。
「橘花が行くなら僕も行くから、問題ないね。」
それに対し余裕でにっこりと笑って答えたのは、少年より年齢はやや年上だが、遥かに落ち着きのある青年。派手ではない上質な春物の着こなしは、プロのモデルを思わせた。
「あー、あの橘花のピアス、武流兄のプレゼントだろ。すっげえ独占欲丸出し。教えずに渡したんだろ、引くわー。」
こそっと耳元で告げた伊勢大和に、御影武流は器用に片眉をあげて肩をすくめる返事を返した。
「ずっと、ずっと、彼女を見ていたのだから、大学入学祝いに自分の色のピアスを贈るぐらい許されると思うね。橘花も喜んでくれたよ。」
うへぇ、と小さく声を出して、それでも大和は双子の姉と泣き笑いで話している幼馴染を優しく見つめた。
「まあ、でも、橘花もずっと武流兄が好きだったから、良かったけどな。ホント、二人を見てた俺らの方がいつ、くっつくのかとヤキモキしてたんだぜ。」
良かった、良かった、と一人納得する大和をその場に残して、武流は少女の方に向かって歩き出した。「そろそろ、僕の橘花を返してもらおうかな?」
搭乗ゲートへの移動時間が迫っていた。
「じゃあ、行ってくるね!」
パスポートを持った手を大きく双子の弟に振って、反対側の手で元気よく機内持ち込み用の小型バッグを抱える。春日は最後に、橘花を片手でハグした。
その時、
春日と橘花を中心に、黒い蛇のような煙が床から湧き上がり、屋内だというのにバリバリと雷鳴が響いた。
「え!?」「きゃーあ」「何だ!」
「橘花!」
「武流さん!」
お互いの伸ばした手はすんでのとことで届かなかった。
居合わせた何千人と言う人々の目の前で、伊勢春日と佐倉橘花はその場からかき消えた。