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葛藤

作者: 久田優美

初投稿の稚拙な作品ですが、誰かの心に響けば幸いです。

 虚無だ。出かけたくない。何も食べたくない。動くのも煩わしい。もはや何もしたくない。ずっと寝ていたい。

 それは突然襲ってくる感覚。普段の私を知る人はさぞ驚くことだろう。この情けない姿に。

 「ほんと何でも卒なくこなすよね」「やっぱ天才は出来が違うね」「良いなぁ、悩みとか無さそう」

 いや、私を本当に知る人なんていない。私にも分からないんだから。あの人に出会うまでは。



 「もっと人に頼って良いと思うよ」

 この人は何を言っているんだろうか。私が誰かに頼る?あり得ない。みんな腹の底では何を考えているのか分かったもんじゃない。厳密には分かっている事が1つだけある。きっと私は便利屋とでも思われている。この人もそうに違いない。見返りを求めて優しい顔をしているに違いない。

 「ねぇねぇ、宿題写させて!」「学級委員とか誰でも良いよ、さっさと決めよーぜ」「誰かノートを職員室まで運んでおいてくれ」

 断れないのは私の弱さ。でも、決して表に出すわけにはいかない。ニコニコと今日も営業スマイルで引き受ける。あたかも自分が望んだ事であるかように。それが私。

 私は恐れているんだと思う。自分の居場所を失う事が、誰にも必要とされない事が、怖くて怖くてたまらない。

 常に相手の顔色を伺いながら生きてきた。そうせざるを得なかった。だってその方が平和だから。私が我慢すれば、万事うまくいく。私が相手の望みを叶えれば、良き理解者だと信頼される。そう思っていた。

 だけどなぜだろう。時折、無性に腹が立つ。自ら選択した事だというのに、私が創り出した快適な環境に甘んじている姿が気に入らない。さも当然のように恩恵ばかり享受する姿が気に食わない。

 そんな時、何もかもが無意味で不要なものに思えてくるのだ。もういっそのこと終わらせようか。私は辟易していた。

 「君は心配性だからね、才能ではなく、用意周到なんだ」

 そう。そうなのだ。私にだってできないこともある。それをよしとしないから、事前にありとあらゆる可能性と対策を考え、実行しているだけなのだ。

 「君にはね、悩み事が無いんじゃなくて、考え事しか無いんだ」

 そう。そうなのだ。悩む時間ほど無駄なことは無いと思う。悩む暇があるならば、どう解決するか思案した方が有意義だ。やれ服はどれにしようかだの、やれ告白しようかしまいかだの、悩むくらいなら辞めるか、決断するための材料でも集めた方が、自分のためになる。

 「そうやって気を張り続けているから、空っぽになる」

 そんなこと分かっている。無気力になるのは、決まって人間関係に疲弊した時なのだから。

 「悩むなんて君らしくない。全部壊しちゃえ。」

 あはは、良いね、壊しちゃおうか。 私の存在をありがたく思えば良い。どれほど気遣ってきたか思い知れば良い!

 ……本当にそうだろうか。私がやってきたことなんて自己満足でしかない。そして、誰かの役に立つ自分に酔いしれていたのかもしれない。



あああ、うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。水蒸気になりたい。消えてもそこに在り続ける水分子。私はまた眠りにつく。理想の自分に戻るため。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

“あの人”の正体については、筆者の中で定まっていますが、人それぞれ解釈があっても面白いなと思います。

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