発見
転生してから1週間。
俺やその周りについていくつか分かったことがある。
俺はノア・ロドリゲスという名前で、ロドリゲス家の次男だ。
五歳の兄リアムと三歳の姉エマ、母親のオリビアと父親であるジェームズの五人家族である。
ロドリゲス家は名門貴族で、かなりの権力があるらしい。
正直貴族の礼儀作法やダンスパーティーなんてしたくもないが、食料に困るような家ではないのでそれよりは良いのかもしれない。
そして今自分がいる場所についてだ。
俺は今、サンテ大陸のケコーザ王国にいる。
うん……………異世界だね。ここ。
転生って分かった時思ったよ?
これ異世界転生ルートじゃね?って。
思い当たる節はいくつかあったよ。
まず俺のいる家が中世ヨーロッパの宮殿かって感じだからね。
あと、見たところ文明レベルも中世ぐらいだし。
ただ、決め手はやっぱり魔法だな。
部屋の外で誰かが「魔法が〜」って言ってた時にはもう悟ったよ。
ここが地球ではないと。
ここで疑問だったのは、俺が会話を聞き取れるということだ。
俺は1週間で異世界語をマスターできるほどの脳ミソを持っていないし、ましてやここが日本でないことくらい重々承知している。
ではなぜだろう。
それを、母が俺の隣に置いていった本を見て理解した。
その本は日本語とは全く異なる言語で書かれていた。
しかし、なぜか俺はその言葉を見て瞬時に意味を理解出来たのだ。
これはもしや、、、!?
転生特典的なやつか!?
もう、そうとしか考えられん。
それ以外に何があるというのだ。
これは言わば、転生者に与えられるデフォルトのスキルみたいなものだ。
いやぁ〜ありがたい。
言語学習の手間が省けるのは本当にありがたい。
なにせ、前世では高校での英語の成績はズタボロだったのだから。
どんな優秀な塾講師の授業を聞いても、どんなテキストで学習しても微塵も成長しなかった。
他言語の習得は死んでも無理だとしみじみ思った。
しかし!
今の俺には自動翻訳機能があるのだ!
どんな長文でもかかってこい!!
と思っていたのだが、あることに気がついた。
聞き取れはするけど、喋れないじゃん。
いくら喋ろうと思っても、口が赤ちゃんなのでまともな発音が出来ない。
まあでも、一般的な乳児もそうか。
ここで俺がいきなり、
「おはようございます、お母様。」
と、報道アナウンサー並の滑舌で話し始めたらそれはそれで恐怖を覚えるだろう。
という訳で喋る練習も急ぐ必要はなさそうだ。
そこであることを思い出した。
この家には膨大な量の本があるのだ。
一度母が俺を抱き抱えて本のある部屋に行ったことがある。
そこは図書館かと思うくらい夥しい数の本が並んでおり、流石は貴族様だと感心してしまった。
きっとあそこには、魔法に関する本も沢山あるだろう。
一刻も早く魔導書たるものを読まなければ。
ただし残念ながら今の俺は、身体を思うように動かせずベッドから出ることすらままならない。
とすると、現在の最重要ミッションはこれだろう。
俺はその日からハイハイの特訓を始めた。