転生
何やらザワザワとした声が聞こえる。
気を失って倒れた俺の安否を確認する為に来るかもしれない両親の声かと思ったが、それとは違う。
明らかに三人以上の声が聞こえるのだ。いや、もっと多いだろう。
まさか親戚が全員集合でもしているのか?
お見舞いするよりされる立場であろうおじいちゃんおばあちゃんまで来ているというのか?
そんな想像を膨らませながら目を開けてみると―――
知らない天井だった。
いや天井どころではない。
何もかもが俺の知っているものとは違っていた。
天井には豪華なシャンデリア。
自分が寝ているベッドは俺の昔の子供部屋くらいの広さがある。
部屋の広さは、もう俺が知っている住居のそれではなかった。
そして何よりも驚いたのは、部屋のあちこちにメイドと思しき女性が何人もいたことだ。
これ今どこにいんの?日本なのかすら不明だわ。
もしかしたら、どこかの国の王族に拉致られたのかもしれない。
そうすると俺はなんのために拉致られたのだろうか。
我が家は金がないので金目的ではない。
と、すると倒れていた俺に一目惚れした姫様が無理矢理連れてきたとか?
残念ながらその線もないだろう。
何せ俺の顔はイケメンとは程遠い、どちらかというとエイリアン寄りの奇妙な顔をしているからだ。
じゃあこれ本当になんなの?
とりあえず辺りを探ってみようかと思った時、部屋のドアが大きな音を立てて開いた。
なんだと思って見てみると、そこには外国人のような顔の男が汗だくで立っていた。
「オリビア!産まれたのかい!?」
そう叫んでこちらを見ている。
いや、オリビアって誰やねん。
ていうか何でこっち見てんだよ。怖いわ。
流石に俺はオリビアじゃないだろ。
違うよね?ねぇ?
違うと言ってくれよ!誰か!
「大きな声で叫ばないの。この子が怖がってしまうわ。」
俺の真後ろで優しい女性の声がした。
ずっと気づかなかったものの、俺の横には女性がいたのである。
金色の長髪が似合う、非常に綺麗な女性だ。
年齢は男と同じくらいで、二十代後半に見える。
ん?待てよ?
この女性がオリビアなのだとしたら、一緒に寝てる俺はなんなんだ!
夫と思われる男の目の前で妻と寝ている俺、やばくないか?
修羅場到来なのかこれは。
でも落ち着け。
さっき男は"産まれた"と言っていたはずだ。
ってことは俺って、、、
恐る恐る俯き、自分の身体を確認する。
俺が見たのは、綺麗な赤ん坊の身体だった。
全身がムチムチしていて何とも愛おしい。
もうこれは認めざるを得ないのかもしれない。
俺は最近流行りのアレしてしまったようだ。
アニメや漫画で何度も見たアレである。
マジかよ......とこぼしそうな俺に、オリビアであろう女性が笑顔で話しかける。
「お疲れ様。よく頑張ったね、ノア」
俺は、日本ではないであろう場所で、ノアという名の子供に転生してしまったようである。
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