プロローグ
緊急事態である。
心臓は激しく脈打ち、瞳孔も開いている。
目の前には暗号のような文字が永遠と並べられており、俺の手は痙攣したかの如く震えている。
ああ、どうすればいい。
そう思い続けていたその時、一人の男の声が俺のいた空間に響いた。
「止め。これで英語のテストを終了する。」
長い苦しみから解放され、全身の力が抜けていくのを感じる。
たった今、高校二年生の中間テストが終わった。
テストは全教科ほぼ何も書けていないのだから散々なものだろう。
それでもいい。終わったという事実が大事なのだから。
そんなことを思っている内に下校時間になったので帰ろうとしたのだが、今日は掃除当番である。
それと同時に、今日の四時からは好きなアニメの最終話が放送される。
掃除は長いと二十分かかる。
現在の時刻、三時三十分。
通学時間は約二十分。
間に合わない。不覚にも録画をし忘れてしまった。
もう時間はない。覚悟を決めるぞ、俺。
そして―――
クラスの仕事よりもアニメを取った俺は今、とぼとぼと帰っている。
許してくれ先生。皆んな。仕方ないんだ!
そう自分に言い聞かせていると、突然頭がクラッとした。
脳震盪のような感覚だ。
気持ち悪いのでしばらく壁にもたれかかっていると、激しい吐き気が襲ってきた。
風邪か?
試験で疲れて熱でも出たのか?
どっちでもいい。とにかく家に帰ってアニメ最終話だ。
それを見るまで、俺は倒れることは出来ない!
なんて思った瞬間、世界が右に傾き、ドサッと音がした。
なんだこれ?景色がなんで傾いてんだ?
あ、そうか。俺が倒れたのか。
起き上がろうとしても、何故か身体はピクリとも動かない。
視界もだんだんボヤけてきた。
これは起きたら病院のベッドだな。
でもそしたらアニメ見られないじゃん。
ワンチャン母さんが録画してないかな。
母さん、頼むで。
母親に想いを託し、俺は気を失った。
面白ければ、ブックマーク、評価をお願い致します。