◇零◇
あの日、私は夢を見た。
鮮やかに咲き乱れる蒲公英畑に、一輪だけ咲いた色違いの白。
周りの花に圧されて少し下を向いたそれを、どこか寂しそうだと感じたのは花言葉のせいかもしれない。
《真心の愛》
それが蒲公英の花言葉。だけど、白い蒲公英には別の花言葉がある。
《私を探して、見つめて》
周りとは違うその色に、孤独であるその身に……太陽を求めるが如く、そう両手を広げて祈るのは私と似ている。そういう同情や共感もあったのだろうか。
夢の中、はっきりしない意識の中でぼうっと考えていると、風が吹いた。
思わず閉じてしまった眼を薄く開くと、虚ろな表情で俯く白い男が立っている。蒲公英畑の中央、白い蒲公英が生えていたその場所に。
「あなたは……」
その男はあまりに美しかった。花のように可憐で、儚く脆く、そして柔らかな雰囲気を纏っている。……いや、雰囲気だけじゃない。
白銀に染まるセミロングの髪や、伏せる瞼に揃う長い睫、曇り空のような着物。どれをとっても、非の打ちどころがないほど美しい。
私に気が付いた彼は、柔らかな微笑みを浮かべた次の瞬間、何故かその着物と同じように表情を曇らせた。
「私を、探しておくれ。私だけを……見つめてくれないかい」
泣きそうな声。
白い蒲公英、白花蒲公英の花言葉。
また、風が吹く。
久しぶりに書いた小説なのに、初めての和風ファンタジー…。
語彙力も皆無ですが、それなりに頑張って完結したいなあと思っています。
毎日もしくは隔日投稿できればと思うので、よろしければおつきあいください。