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プロローグ
全世界の誰しもが知っている人間がいるとすれば、それは宇宙人か。
メディアを持っていない人間すらも名前と存在を知っている彼女こそが、この世界の持ち主である。
稼ぎの大半を世界の貧困層に投資し、それも十何年も続ければ。彼女レベルの投資を受ければ先進国と同等か、それ以上の都市を作り上げることなんてたやすい。
その国の国民は彼女に陶酔している。彼女がいなければ今の私たちがいなかった。
それはその国民の意識に根強く存在している。
つまり、その国は彼女の奴隷である。
何十億もの人間を従えた彼女。
それが今目の前に腕を組み僕を見下している彼女である。
唯一無二の伝説のアイドル「神田舞亞」。
全人類の頂点的存在であり。
神からの贈り物。
天は彼女の味方であり、どんな存在よりも圧倒的な存在を放ち、何物にも文句を言わせない。
しかし、彼女は僕にこう言った。
「ねぇ。あなた。私の奴隷になる気はない?」
彼女の後ろに控える屈強な男どもがカートン単位で見えなければ、ソッコーで断ったはずだ。
選択肢は、首を縦に振るしかなかった。