中傷者
ある昭和の大横綱が横綱なるにあたって「これから自分は悪役でいこう」と決心したそうです。ウソかホントかまでは分かりませんけども。
とにかく、横綱は嫌われるほど強くないと場所は盛り上がらないらしいですし、勝って喜ばれるようでは綱の資格なし、という角界の不文律もあるそうです。
どんな世界であれ、最強の称号は孤高でなくてはいけないのでしょう。
んでもってその横綱は勝ってもにこりともせず、下位の力士にも容赦なく睨みつけ投げ飛ばし、実際に全盛期には「憎らしいほど強い」というコピーまでついてたとのこと。自分が生まれる前の話なのでよくは知りませんけども。
でも全盛期なんていっときのこと。どんなに強いアスリートでもトップ張れるのはもって10年、現在はもっと短いかもしれません。横綱が勝って観客に安堵されるようではダメなのでしょう。実際、横綱大関が不調では盛り上がらないでしょう。
昭和のプロレスなんかでも観客席はカオスのような状態で、黄金期の頃は観客席からの怒号やヤジは当然で、物投げたり酔っ払って喧嘩する客も珍しくなかったそう。観戦マナーが当たり前になってる現在からはちょっと想像できないけど、それほど観客が盛り上がってた時代もあったってことなのでしょう。
プロ野球でもバックネットに登って強すぎる球団への抗議文の垂れ幕を掲げたファンもいたらしいし、応援団が小競り合いするのも珍しくなかったとも聞きます。
多分その時代には他にストレスというか、エネルギーを発散する場がなかったんでしょうね。スポーツイベントで盛り上がることによって当時のモーレツ社員は明日の活力をチャージしてたのでしょう。
しかしいま現在、観戦マナーはずっと良くなったとはいえ、その分SNS等での誹謗中傷などが問題視されるようにもなってます。どちらが健全なのかは自分ごときには分かりませんが、もう時代が違うということなのでしょうか。スポーツが盛り上がらなくなったともよく聞きますが、それ以外の娯楽が増えたこと、観戦の機会が減ったこと、そもそも観客自体が減っていってるのも要因としてあるような気もします。
二年前、女子プロレスラーさんが誹謗中傷により自殺する一件がありました。ただし、これは本職ではなく出演したバラエティ番組でヘイト役を演じたために中傷が殺到したとのことのようですが。
もしこれが本業でのヒール役で、それによる中傷であればご本人はまだ耐えられたのではないか、自分はそう推測してます。
ところが中傷を受けたのは本業とは別のバラエティ番組。詳しくは知りませんが妥協して仕方なし的に受けた仕事だったのではないでしょうか。個人的にはそんな気がします。
コンセプトからしてバカっぽい番組を視聴して真に受ける視聴者がどういうパーソナリティーかはよく知りませんけども、バカ番組のヘイト役に対して誹謗中傷のカキコをSNSに上げ続けるエネルギーって何なんだろうと首を傾げざるをえません。
たぶんですが、中傷のカキコを熱心にやってたのは女子プロレスを普段から見てる層ではなく、バカ番組の視聴者層だったのではないでしょうか。女子プロレスのファン層がバカ番組の演出に腹立てるとは思えません。
きっとその連中はスポーツイベントで盛り上がったこともなければ盛り上がった挙句、観戦マナーを無視した迷惑行為を働いて自己嫌悪に陥ったことすらないんじゃないだろうか。根拠はありませんがそんな気がします。
実のところスポーツなんて日頃からそんなに見てないし興味もないし詳しいわけでもない、そのくせネット上では訳知り顔で知ったかぶって誹謗中傷のカキコにはやたら熱心なんじゃないだろうか。そういう人間はどこのサイトでもたいてい1人や2人はいます。
そういう連中は昭和の観客のようにイベント自体で盛り上がるのではなく、誹謗中傷のカキコ自体が娯楽になっているのではないでしょうか。中傷でしか明日への活力をチャージできなくなってしまっているというか。
いや、明日への活力をチャージする必要もない、仕事も向上心も、人生の目標も特にない暇人だからSNSに誹謗中傷のカキコくらいしかやれることがないんでしょうな。
誹謗中傷は顔も名前も晒さない利点はあるけど、自身の境遇を晒すリスクは自覚しておいた方が良いかもしれません。




