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信玄の厠  作者: 厠 達三
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『人生なんてつまんない』

 ある麻雀マンガにこんな楽曲を歌う人気歌手さんが高レート麻雀に手を出し、主人公の麻雀職人にコテンパンにやられるというエピソードがありました。


 ま、これはマンガなのでそんな楽曲はありえないだろうし、ヒットするとも到底思えません。マンガだからそんな曲がヒットしている、という設定なのであって。ただ個人的にはその曲を歌ってた人気歌手は実在の人気演歌歌手さんをモデルにしてるような印象を受けました。


 それはともかく作品には「こんな曲がヒットして調子こいてる奴はしょうもない」ってメッセが込められてるのですが。しかし本当にそうだろうか? と思ってしまうのが底辺サブカル好きの哀しい性。

 このマンガの原作者も結構な成功者です。人気演歌歌手とは言わないまでも、大御所と言って差し支えないほどの人気作家ではないでしょうか。


 もしかするとこの原作者も「人生なんてつまんない」と感じるときがあるんじゃ? と勘繰ってしまうのです。


 メジャーな人気作家となったら好きなもんだけ書いてりゃいいってわけにはいきません。読者の傾向や嗜好に常に気を配り、流行を追い、人気を維持するためには自分をも殺さなきゃいけないってのは自分程度でも知ってます。仕事とはそういうものです。気に食わないからこれはやりたくない、なんて贅沢許されるのは素人作家のみです。売れなきゃ食えないんですから。やりたいことだけやって売れなきゃ残酷に打ち切られるし、一度貼られた不人気のレッテルはなかなか剥がせません。そうなると転職も考えねばなりません。実際そんな作家さんの方がずっと多いのは分かりきってることで。


 この原作者さんもやっぱり脚本の仕事が好きだし憧れもあったのでしょう。でも売れるほどに、人気が出るほどにプレッシャーはどんどんのしかかってくる。成功を収めれば収めるほどバカな誹謗中傷してくるバカも大勢出てくる。

 挙句の果てにはその仕事でもなかなか自分の好きなことがやれなくなる。読者、出版社、世間に忖度するような内容も時に求められ、自分のやりたいことは半分もできなかったりする。


 そんな境遇で成功を収めたとしても、ふと、人生なんてつまんない、と思ってしまう瞬間はあるのではないか? そんな想像をしてしまうのです。

 もちろん現実はそんなロマン的な感情など許しちゃくれません。人生がつまんなかろうが面白かろうが仕事して稼がない限り生きてはいけない。人気作家ともなったらおいそれとも休めない。常に人気、売り上げという気まぐれな数字に神経張り詰めてなきゃいけない。その中でいいものを生み出し続けなければいけない。人気の維持に気も配ってなきゃいけない。


 だから人生なんてつまんない、なんて曲を歌ってた人気歌手のキャラにどこかリアリティがあるんでしょうね。マンガでは当然主人公に痛い目に遭わされてましたが、それは成功者となった原作者が強く求めていることなのかも。



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