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信玄の厠  作者: 厠 達三
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自殺考

 あんまり触れたくないタブーなんだけど、クリエイター的には避けては通れない、というか、クリエイターぶりたがる自分にとっては非常に甘美なテーマなのでちょいと触れておこうと思います。甚だ不謹慎ではありますが。とはいえ、そんなに深刻な話ではないのでご安心を。


 戦前、戦後にかけての文壇ではこの自殺が一種、クリエイターのステータスのようになってたように思えます。まあ、自分が生まれる前なのでただの印象かもですが。しかし戦前、戦後から自殺に対する世間の印象はあまり変わってはいないようにも思えます。一般的にはもちろんやっちゃいけないって事にはなってるけど、一部の層にはある種の憧れ、尊敬の眼差しというものも確実にあるような気がします。


 そこにもヒエラルキーが存在し、逃避のための自殺は下の下、自身の才能に限界を感じての自殺は高尚、という、ワケの分かんないカテゴリ分けです。

 小説家にはことさら後者のパターンが多いように見受けられます。太宰なんかは自分のスタイルに箔をつけるために、あえてやってたフシがあります。芥川も自殺談義の翌日に命を断ったと聞きます。俗説かもしれませんが。もしかすると誰かに言われたのかもしれませんね。「君は自殺をことさら尊いもののように言ってるが、君自身、それをやる度胸はあるのかい?」とかなんとか。文壇って、そういう容赦ないとこありそうですから。ただの想像ですが。

 実際、芥川の晩年の作品は一般人には理解出来かねるものになってたので精神的にかなり疲弊してた、ってのはあるかもです。有名ドコロの話ばかりで申し訳ないのですが。


 そしてその場合、自殺する人は才能に溢れ、影響力があればある程よしとされるような空気を感じてしまうのです。作家としてさあ、これから脂が乗ってくるぞ、ってタイミングで、呆気なく命を断つのです。多くのファンの期待を裏切って、才能抱えたまま死神の手を取る道を選ぶのです。そこにはファンよりも、死を選ぶことによって、自身の才能を自ら摘み取ることによって、自身の才能を再認識させたいというナルシシズムにも似た、ある種のテロリズムを想起させるのです。

 彼らにとって死とは決して忌むべきものではなく、むしろ自身の才能とは不可分であり、その能力の源泉ともなりうる、非常に身近でありふれた希望のひとつのように思えてなりません。常に彼らの傍らにあり、時に絶望を与えながらも生の原動力となりうる粘性がありつつも、しかしそれは決して纏わり付くようなものではなく、たおやかに寄り添うような一種の陶酔感にも似た甘やさがある一方で、それは彼らに許された最後の武器でもあり、その撃鉄に常に指をかけているような危うさに身を置き続けていなければ、退廃的でありデカダンであり、しかしある一方向においては強靭な意志をも持ちうる彼らは自我を保つことができないのではないかとさえ思えるのです。いかん、文学なんか読んでるせいでにわか文学脳になってしまってる!


 まあそんな自分が生まれる前の偉人のことはさておいて、時代が下ってもそのトレンドはまだ連綿と受け継がれているようにも思えます。

 もしかするとこのサイトに小説投稿してる人にも自殺を主題に置いてる人は多いかもです。自分が楽しんでるフリゲーにしても自殺を扱った作品は多いです。プレイするたんびに「また自殺モンかよ。チッ」などとゲップ混じりにクリックしてるなんてことはありませんからね? 楽しくプレイさせてもらってますからね!

 それだけクリエイターは感受性が強いってことなのかな。常に死を身近に置いていないと精神の均衡が保てないような繊細さがあるような気がします。なんとも、先達も罪深い前例作ったもんです。

 いや、個人的にはOKですよ? ダメ! 絶対! なんて事情も聞かずに説教だけできるほど自分は傲慢じゃありませんから。進退窮まって自死を選択する自由はあってもいいと思います。でもクリエイターなら、ファンがもし一人でもいるのなら、なにをさておいてもそちらの期待に応えるもんでしょって、エセクリエイターの自分などは不遜にも思ってしまうのですよ。自分の才能を自ら摘み取って世間に問いたいなんて考えないで。死ぬ死ぬ詐欺ならいくらやっても構いませんけどね。

 なにが言いたいのかと言うとファンの期待に応えもせずさっさと命を断つような人は、なんぼメジャーでも俺はクリエイターとは認めない、ってことです。

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