読書
え〜、つい昨日、仕事帰りに図書館寄って三島作品を数冊借りてきました……
わははははは…… あれほど偉そうなこと言っといてもうこの変節ぶり。いいんです。もともと変節漢だから。いや、決して三島の販促に乗っかったわけではなくて、やっぱりエッセイに名前まで出しといてそれで読んでませんというのもカッコつかないかな? という見栄&義務感のようなものなのでまだギリセーフというのが自分的言い訳なのであります。まあ、読むって事実には変わりはないのですが。
とりあえず借りてきたのは小説一冊と短篇集だか随筆集っぽい一冊。これにはエッセイなんかも収録されてるので自分にも理解できるかも知んない。で、あとは現代作家の歴史小説の合計三冊。このへんはいつものルーチンだ。
んで、小説はなにかって言うとタイトルだけは挙げられがちな金閣寺。実はこれの文庫がかつての我が家にもあって読みかけたこともあったんだけど、なんかあまりにも退屈なので途中で投げてしまったんですね。でも、それなりに年齢を重ねて読書力もちょっとは上がってる今の自分なら読了くらいはできるかも、って希望的観測。でも、やっぱり退屈。血沸き肉踊る盛り上がりもないし。いや、そんなもんを求めるジャンルじゃないってのは分かってんですけどね。
表現があまりにも美しすぎて脳ミソに全く入ってこず。気付いたら字面だけをなぞってる俺がいる……なんとか読了して三島作品攻略の実績を得たいものです。一冊読んだ程度で攻略もなにもないと思うんだけど……
エッセイの方はまだ読みやすいです。ただこちらも文面の端々に文学文学した記述があってすんなりとは入ってきません。それに三島の人生知ってるとどうにも斜に構えて読んでしまいます。このあたりに三島作品を敬遠する一因があるのかも。
その中に興味を惹くタイトルがあったのでそれを読んでみます。タイトルは「人に迷惑をかけて死ぬべし」……う〜ん……ますます三島の術中にハマっていくような気がする。でも、気になるので読んでみます。
要約すると自称芸術家の大学生がカノジョと心中することに決めたので、その前に三島に会いにゆきます。ついでに三島にも小説やめろといった内容の手紙を送りつけてきたとのこと。それに対する三島の考察ですね。
その手紙ってのも文学文学してて、ホントにハタチかそこらの若造が書いたの? って思えるほどの完成度。いや、三島が添削してる可能性も無きにしもあらずですが。ちなみに心中の理由は分かりません。カノジョが死ぬと決めたので彼氏である差出人がそれに付き合うって流れっぽい。どうもカノジョは三島のファンであるらしいことが文面から窺えます。で、三島に会いにゆくと結んでるものの、その二人が実際に会いに来たわけでもないっぽいです。
それを踏まえた上で、三島によると若い頃ってのはそういう思考に陥ることが往往にしてあると。(そうかあ?) で、死ぬと決めたのなら犯罪なりなんなりやってせいぜい周囲に迷惑をかけてから死になさいと。そこまでやってたら多分死のうなんて気にはなんないよ、というのが三島説であるらしいです。
自分の拙い読書力でこの理解でいいのかな? とも思えますが、自分はそう受け取ったのでその前提で話を進めます。
そもそもこんな文学文学した手紙を書いて送るファンが実在するのかという前提からして疑問符が付きますが、文壇にはそういうちょいとイカれたふりをしたがる人が往往にしているのかもしれません。で、理由もよく分からんのに心中できるのかという疑問。死ぬと決めたので死ぬ前に三島の顔を拝みにゆくという理解不能な予告。この行動は三島が述懐する「死ぬと決めたら人、世間に大いに迷惑かけなさい」という自説にも合致します。
つまり、この前提を許容するなら差出人は驚くほど三島の思考を忠実にトレースしてることになりますな。まさかこの手紙を読んで三島が差出人にシンパシー感じて「人に迷惑かけて〜」などと思い至ったわけではないでしょう。
そもそも本気で死にたいって人が予告したり周囲に死ぬぞ死ぬぞと喚いたりするもんなんでしょうか。そんなこと言ってたら間違いなく止められるし覚悟も鈍ってしまいます。本気で死ぬ人は誰にも打ち明けず、周囲も驚くほど自然に振る舞う中で、ひっそりとその覚悟を遂行するものと自分などは思うのですが。
しかるに差出人は取るに足らない愉快犯の域を出ていません。心中するってのもカノジョとのイチャつきを再確認する、オママゴトでしかないように思えます。もちろん、三島もこの手紙の内容を真面目に受け取ってるわけではなくて、恐らく本当に自殺を考えてる人に向けてのことなのでしょう。本気で死ぬつもりならそんな手紙など決して出さず、誰にも知られずに行うものではないでしょうか。
計画練って、実行して、そして最後にその覚悟を遂行した三島自身と同じように。周囲が「なんであの人が……」と思わずにはいられないほど、その行動は突発的で防ぎようが無いほどに。
ま、小説の一冊も読まずにそこまで言うのはおこがましいので、これからせいぜい頑張って読むことにしますよ。(もう術中にハマってる)