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信玄の厠  作者: 厠 達三
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タワーディフェンス

 コロナにかこつけた童話風掌編でっす。


 むかしむかし、巨大な王国がありました。何代も続く王家は名君を数多く排出し、政治は適切に行われ軍隊も強く、周辺諸国との関係も良好。その中心にある王都は巨大な城壁に守られ、その中で市民はなに不自由ない生活を謳歌していました。ほとんどの国民が国の政治、制度に満足していたのです。


 が、王都より数キロ離れた奈落の洞穴から、突如モンスターが出現しました。モンスターはスライム、ゴブリン、コボルトといった低級のものばかり。しかし低級とはいえ、モンスターは猛獣ではありません。人間の武器はほとんど通じず、武力での対応は非常に困難でした。

 そこで人間は毒餌での対抗法を発見しました。毒餌を王都の防衛ラインに撒き、それに食いついたモンスターは勝手に自滅するという、まことに効率のよい方法です。


 ちなみに毒餌の作り方は超簡単。浄めのお塩や聖水をお団子に練り込む、まあぶっちゃけゴキブリ団子の要領なので大量生産が可能なうえ低コストで済みます。

 この対抗法により、もはやモンスターは脅威ではなくなり、奈落の洞穴にモンスターを封じ込めることに成功したのです。


 定期的にモンスターの群れが出現することはあっても監視を怠らず、毒餌作戦を用いれば問題なく対処できるので王都の軍隊も市民も、完全にモンスターをコントロール出来ていると思っていました。人々は完全にモンスターをナメきっていました。そんな状態のまま、王都は長く繁栄を続けました。


 が、人々がモンスターの発生になんの疑問も抱かなくなった頃、それは突如として起こったのです。


 今までになかったほどの大量の低級モンスターが穴から次々現れ、王都目指して殺到したのです。もちろん、王都はいつものように毒餌で対抗。毒餌は問題なく効き、大量のモンスターが防衛ラインに屍を晒しました。

 が、それでもモンスターの進軍は止まりません。なにしろ穴から無尽蔵とも言えるほどのモンスターが際限なく湧いてくるのです。大量に撒かれた毒餌以上の数のモンスターが地面を覆っていたのですから。こんなことは初めてでしたし、誰も想定していませんでした。防衛ラインが突破される頃には大量に備蓄されていた毒餌も底を尽いてしまいました。


 王都は直ちに緊急事態宣言を発布し、市民、軍隊、子供も老人も総動員で毒餌作りに邁進しました。事、ここにいたってそんなことをしている場合でもなさそうですが、王都のほとんどの人は今までやってきた方法から抜け出せなかったのです。


 もちろん、そんな泥縄が功を奏するはずもなく、城壁は突破され、繁栄を誇った王都は大量のモンスターによって陥落したのです。

 これが、彼らモンスターの戦略だったのです。

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