投稿作品
これまた自身がいろいろなエッセイで書いてることなんでここでも言うのは憚られるけど、昔、ハガキ職人やってました。これは自分の中では数少ない自慢できるキャリアなのでしつこいほどに繰り返してしまいます。
もちろん趣味としてやってたことなので、楽しかったのが大前提であります。努力したとか苦労したとか言いたいわけでもございません。
ま、確かに自慢できるほどでもない中堅常連ではあったけど、それでも掲載数ランキングとかやればトップ20くらいには食い込んでたんじゃないかな? それだけでもう鼻高々なのです。
が、それも掲載してくれる編集さんあってのこと。これまた自慢になってしまうけど自分は結構空気が読める。その洞察力でもって編集さんの好みを見抜き、他の投稿作品から傾向と対策を割り出し、常連の座を勝ち取ったのです。
その分、ボツった作品も当然多くあるわけで、トータルでは没と掲載の割合はフィフティフィフティくらいだったんじゃなかろうか。これがどの程度の打率なのかは自分ではよく分からないのですが。
が、その勝ち取った常連の座も自身の超身勝手な理由で放棄することに。んで、ネット投稿者に鞍替えした現在に至るわけです。
最初こそハガキ職人の延長とばかりに軽〜い気持ちで始めたんだけど、最近、それがいかに危険で恐ろしいことかと戦々恐々としてたりします。
ハガキ職人の場合はボツる可能性が多分にあります。魂込めた渾身の一枚がボツることもあれば滑り止めの一枚が掲載されることもあります。ま、常連になってからはそのへんの勘所も掴めてはいましたが、手抜きは間違いなく看破されます。自慢じゃないけど自分も駆け出しの頃は手当り次第に投稿してたけど、追われる立場になってからは、明らかにダメなものは自らボツれるまでになっていました。
いわばボツる編集さんは雛鳥が飛べるようになるまで世話を焼いてくれる親鳥のようなものです。ボツられるのは確かに悔しいけど、振り返ってみると真っ当な判断だったと分かるものです。なにしろ出版の現場に携わるプロなんだから当然です。
ハガキ職人で常連張った人はほとんどがボツをバネにモチベが上がる人たちだったんではないでしょうか。
翻ってネット投稿はボツってくれる編集さんがいません。投稿作品は全掲載です。これは紙媒体と比べて大きなメリットではありますが、非常にリスキーだと個人的に感じてしまうのです。
イラストなんかはまだいいんです。下描きや落書きでもネットなら掲載はされます。掲載数が限られる雑誌の読者コーナーでは下描きなど100パー没です。印刷に出ませんから。でも、ネットなら問題なく掲載されます。それが悪いとは言わないんです。自分だってしょっちゅうやってるし、下描きや落書きの方が興味を惹く場合もありますし。多少、苦情が出ることもあると小耳に挟んだことがありますが、自分が投稿しているサイトではそのような面倒は幸いにもありません。
が、文章の場合だとこれは結構厄介。ボツってくれる人がいないというのは孵化したウミガメが大海に出るようなものです。
何気ない一言が意図せず特定の人を傷つけることがあるかもしれない。誤解を招いて論争になることもあるかもしれない。実際、ハガキ職人時代にもそういう事例はあったし、そういうこともあるのだということを学べもしました。
しかし今の若い人はいきなりネット投稿という世界に踏み出さざるを得ないわけです。まずはハガキ職人からスタートしようなんて無責任なアドバイス、自分にはできません。あの頃とは時代が違います。紙媒体はずっと少なくなってるので競争倍率はハンパなく上がっているはずです。そんな厳しい世界を勝ち抜いてからネットに投稿しようなんて偉そうなこと、中堅常連でしかなかった自分にはとても言えません。いや、神常連だったとしても多分言えないでしょう。
ネットの場合は余程悪意のある投稿でもない限り削除はされません。それにしたって一度は公開はされるのです。その間にとんでもなく人を傷つけてしまう可能性も多分にあるのです。本人が意図するしないに関わらず。
自分はハガキ職人だったおかげで、多くの人に守られていた事実を今更ながら知ったのです。これも自身の、数少ない誇れるキャリアのひとつなのです。