表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界転移者は悉く。』※修正中  作者: 無瀬
《グレイズ魔法店》
60/61

第56話 『交換条件』

 

「ソレイユ、少し良いか?」


「ええ、大丈夫ですが」


 彼女は突然エリスに呼び掛けられ、不思議そうな表情を浮かべたが快く頷いた。


「私はこれから、ナルシアに向かおうと思う」


「……!何故ですか?」


「あの傷を負った騎士は、気絶する前に『ナルシア』そして『邪悪』と言った。ソレイユ……お前も聞き覚えがあるだろう。『邪悪の樹』という名前に」


「それは……」


 ソレイユは目を逸らし口篭る。

 その反応から何かを察したのか、エリスは彼女に一歩詰め寄る。


「彼は、二番隊騎士だな。叔父上は昨日、二番隊を派遣したと言っていたが……」


「……はい。彼は昨日二番隊騎士を連れ、『心臓』を回収する為、ナルシアに向かいました」


「ふむ、ナルシアへは走鳥に乗っても半日はかかる……着いてすぐに襲われたと考えるのが妥当か……?」


「し、しかしエリス様。貴方とカガヤ様はヘクトル王に街に滞在するよう言われたのでは……」


 ソレイユは僅かに焦った様子で言う。

 エリスはそんな彼女に鞄から本を取り出すと、それを手渡した。


「こ、これは?」


「グレイズ、頼む」


「えぇ!あれを見せるの?流石にマズくない?この娘が()()だったら……」


「構わないさ。所謂、情報共有だと思えば良い」


「うーん、まぁ、エリちゃんがそう言うならいいケド」


 グレイズはどこか心配そうにしつつも本に手を掛ける。


『姿を現せ』


 詠唱。本が(おもむろ)に開き、辺りに風が吹いて通行人達が小さな悲鳴を上げる。

 その現象にソレイユは目を見開いた。


「これは、ヘクトル王の……っ?!」


 そして、開かれた本の内部に浮かんだ、


『騎士隊の内部に、邪悪の樹に離反した者がいる』

『ナルシアに向かえ』


 という言葉見た瞬間。

 彼女は誰かが見ていないか確認する様に周りを見回した。


「な、何ですか、これは?!」


「叔父上からの伝言だ」


 エリスは淡々と答え、驚くソレイユに笑いかける。


「だが、安心したよ。お前は離反してはいなさそうだ」


「ソレイユさんには悪いけど、信用して良いのか?」


 自分でも嫌なことを言っているのは分かっているが、ソレイユが離反している可能性が無くなった理由が分からない。


「信用して良いと思うぞ、もしソレイユが離反してるなら……自身の汚点に関する重要な情報が書かれた本を、開きっぱなしにするものか」


 エリスの言葉でソレイユに視線を向ける、彼女は呆然と本を開いたままだ。


「……なるほど」


「そういう事だ。ソレイユ、我々は叔父上の指示通りナルシアに向かう事にする。止めてくれるな」


「そ、そういう事ならば、私には止められませんが……」


 ソレイユは本を閉じ、こちらに差し出す。

 エリスは本を受け取ると、再び鞄にしまい込んだ。


「だが、一つだけお願いがあってな」


「は、はい?なんでしょうか」


「お前はお前で、騎士達内部を洗って欲しい」


 エリスの言葉に、彼女は表情を僅かに曇らせたが、どこか覚悟を決めた様に頷いた。


「分かりました、そのお願い……承諾致します」


「感謝する、ソレイユ」


「しかし、代わりといっては難ですが、私もお願いがあります」


「む、なんだ?」


 ソレイユはどこか恥ずかしそうに、俺の隣に視線を向ける。

 そこには狐娘の少女、ルナールが居た。

 ルナールは何かを察したのかカタカタと震え始めた。


「今度、ルナール様と一日過ごさせて貰えますか?」


「うむ、いいぞ。なぁ?グレイズ」


「うん、いいよー。しばらくお店は暇だし」


「ちょっとー!私の意見を聞いて下さいですー!!嫌ですよー!!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ