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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

元勇者だけど魔王の肛門に転生したので全力で糞を塞き止める

作者:

 世界の最果てにある魔王城。その一室で魔王が腹を押さえて唸っていた。


「うーむ……」

「? どうしたのですか魔王様? 」


 そんな魔王を見兼ねてか、側近の悪魔が魔王に尋ねた。


「うむ。それがここ最近便秘気味でなぁ。原因が分からぬのだよ」

「それは困りましたね」

「うむ、困った困った。魔を統べる者として、便秘に悩まされるなどあってはならぬのだ」

「なるほど……一時的な対処になりますが、こちらの浣腸を使ってみては如何でしょうか? 」

「それはありがたい。ぜひ使わせてもらうとするか」


 魔界で最も有名な浣腸、その名もドラゴン浣腸。強靭な肛門を持ったドラゴンでさえ……止められない―――というキャッチコピーで販売された、聖女の七つ道具の一つである。作り方は至ってシンプルで、

①聖女が水を飲む

②出す

以上。

 魔王は豪華絢爛な便所に入ると、ローブを脱ぎ筋肉に覆われた下半身を顕にした。


「おお、説明書が付属しておるのか」


 部下に見栄を張って「一人で出来る」と言ってしまった魔王。実は浣腸初心者であった。

 魔王は浣腸を手に持ったまま便所の中を歩き回る。なかなか決心がつかないようだ。


「魔王としてこの程度片手間に終わらせねばならぬというのに、これでは皆に見せる顔がない」


 しかしながら、やはり魔王。少し躊躇いはしたものの、意を決して肛門に浣腸を差し込んだ。


「ムムっ、なんだか入りにく……お゛っ」


 ドラゴン浣腸、無事魔王の肛門を通過。


「ふー、よし。あとはこの液体を中に入れるだけか。なんだ、思っていたよりもだいぶ簡単ではないか」


 やってみれば案外簡単だった、と言う話はよく聞くが、それは浣腸にも当てはまるらしい。この調子ならば次のステップに進めそうだと、魔王は安堵した。


「よし、ふっ。んぁあああぁあぁああぁあぁあ」


―――しまった変な声が出た。

そう思った魔王だが、慣れない感覚に声を抑えることが出来ない。本来肛門は“出す”という行為のみを行う器官のはずが、こうして“入れる”行為を行っているのだ。誰だって初めは慣れないだろう。そう、初めは……


「よ、よし全部出し切ったぞ。これで後は待つのみか」


 とりあえず第二の関門は突破できた魔王。安心して便座に座った途端、それは訪れた。


「んぉ゛っ!? こ、これは……なんだ!? 」


 予期せぬ腸のカーニバルにより腹を押さえ蹲る魔王。そんな魔王を尻目に、続けざまに押し寄せる強烈な便意。長い間腸の中で熟成を重ね、もはや岩石と化した便共が「せーの!」で一つしかない肛門になだれ込んでいる。

 魔王は焦った。

 勇者と戦った時よりもやばいと。

 勇者が覚醒し、光の剣で両腕両足を切り飛ばされた時よりもやばいと。

 冷や汗をとめどなく垂れ流し、魔王生命の危機さえ感じていた。


「お゛っお゛、お゛っおお゛」


 恐ろしいまでの便意が魔王を襲う。恐怖のあまり回復魔法をかける魔王だが、それにより腸が活性化してしまった。もうじき失われる威厳に絶望しながら、しかし同時に喜んでもいた。なぜなら、ここ最近うんともすんとも言わなかった腸が、こうして産声の如き歓声を上げているのだ。

 これは出るぞ。凄いのが出るぞ。そう思った魔王は、諦めて大人しく便意に包まれるのであった。


「お゛っ♡」


ブッ!


刹那、音が消える。

勢いで体が宙に浮く。


時の流れが遅くなる―――


ブリュッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 悪魔の如き排泄音が魔王城に響き渡る。糞を垂れ流しながら、音姫付けようかなと朧気ながら考える魔王であった。




 魔王城にある医務室の一角で、魔王がお尻を突き出していた。見ての通り、肛門の検査である。


「齢百万にして魔王様のケツ穴を拝見させて頂く日が来ようとは」

「肛門と呼ぶのだ」

「も、申し訳ありません。魔王様の肛門を拝見させて頂く日が来ようとは」

「……まあよい。今回ばかりは仕方が無いからな。健康に比べればこの程度、些細なことよ」

「さすが魔王様。例え下痢っても魔王様は魔王様です。この肛門から滲み出る魔王の威厳……一生ついていきます」

「侮辱されている気しかしないのだが、まあよい。とりあえずお前の医療魔法で検査を頼む」

「かしこまりました」


 世界に轟く醜態を晒したことで、少しだけ寛容になった魔王。心做しか肛門も寛容になった気がしていた。

 そんなちょっぴり臭い魔王様の肛門に、赤い魔王陣が展開された。詳しいことは術者さえ知らない、黒魔術。


「こ、これは……いやしかし……この魔力は確かに……魔王様」

「む? 我の肛門がどうかしたのか? 」

「……大変言い難いのですが、ま、魔王様の肛門は、どうやら……」

「なんだ早く言ってくれ。我はくどいのが嫌いだ」

「……勇者です」

「勇者? 」

「はい。どうやら魔王様の肛門は勇者になってしまわれたようなのです」

「?????????? 」


 世界を支配した魔王。そんな最凶の存在でさえも、今回ばかりは配下の言葉が理解出来なかった。

 魔王の頭の中に、「肛門=勇者」の文字が浮かんでは消え浮かんでは消え浮かんでは―――


「魔王様、大丈夫でしょうか? 」

「んにゃぁ、ああ大丈夫だ。少し考え事をしていた」


 え? あの魔王様が「んにゃぁ」って言った? あの魔王様が? 嘘だろ? 寝起きの美少女見たいな声を上げた? まじかよ

 と配下は思った。もちろん口に出してはいない。

 そんなことを思っているとはいざ知らず、魔王は配下に尋ねた。


「我の肛門が勇者になった、と言うのは具体的にどういうことなのだ? 」

「それがどうやら、魔王様が以前倒したはずの勇者ナントカが、魔王様の肛門に転生したらしいのです」

「なるほど」


 幸いなことに魔王は以前、転生魔法に纏わる魔導書を読んでいた。その本によれば、転生先に特に制限は無く、なろうと思えば何にでも転生できる、というものらしいのだ。強力な魔法であるがゆえに、その代償として右尻と左乳首を失ってしまう。魔法を作った人の嗜好らしい。

 恐らく勇者も、その転生魔法を使って魔王の肛門に転生したのだろう。

 と、頭では理解しているはずの魔王だったが、体は完全にチンパンジー。理解不能。


「どうして我の肛門に転生するのだ? 全く持って理解出来ないのだが」

「ふーむ……もしかすると魔王様に嫌がらせをする為なのかも知れません」

「ちっ、死してなお小賢しい真似をしよってからに。今ここで暗黒の炎で焼き殺してやるわ」


 魔王の右手に黒炎が灯る。それを見た配下は慌てて魔王を止めた。


「ま、魔王様! それはいけません! 」

「なぜ止める。この黒炎なら勇者でさえも塵とかすはずだが? 」

「魔王様。恐れながら言わせてもらいますが、一生うんこ出来ない体になると考えます」

「それはまずい。非常にまずい。このまま出さずにいたら、そのうち体の至る所から糞が吹き出してしまいそうだ」

「ぶふっ」


 全身から糞を噴射する魔王の姿を想像したのか、配下が吹き出した。どうやら魔王の威厳は既に、糞と共に下水道へ流されたらしい。こんなことならぼっとん便所にしておくべきだった、と思っても後の祭りである。


「ふむ、なってしまったものは仕方がない。できる限り生活習慣を改めるとしよう」

「魔王様……」

「ふっ、そんな顔をするでない。我を誰だと思ってている? かの世界を統べた偉大なる魔王ぞ」


 一瞬だけ垣間見えた威厳。いつの間にかそれは消えていたが、もしかすると魔王は肛門勇者に勝てるかもしれないと、配下は信じてみる気になったのであった。


「さて、とりあえずトイレにいっ―――」


 魔王がベットから立ち上がろうと、足に力を入れた時のことだった。

 いつもなら強靭な筋肉で閉鎖されているはずの肛門が、その時に限っては何故か緩んでいた。

 結果は当然、


「ああぁあああぁあぁああああぁああぁあああ!!!!!!!!!! 」


 吹き出す糞とぶちまけられる糞。辺り一面糞の花畑。殺人的な臭いと眼球を突き破る光景に、配下は意識を失い茶色く染まったベットの上に倒れた。

 勢いよく吹き出す糞に魔王さえも体を痙攣させ、いつの間にか白目を向き全身を糞まみれにしていた。

 視界のテロ―――そんな比喩表現が生温い程の地獄。まさに地獄。もはや楽園。糞うんこぶりぶり。


 その日、魔王城は阿鼻叫喚だったと言う。





 あれら百年後。例の地獄以降、魔王の肛門が開通することは無かった。

 なかなかに頑固な勇者のようで、色々やったが結局開くことは無かった。食べ物で釣っても、勇者の持ち物だった聖剣で誘き出しても、最終兵器である勇者の幼馴染だった聖女の少しえっちい写真で誘惑しても。いや聖女の写真のときは、いつになくヒクついていた。

 しかし、どれも勇者の口を開かせるには至らなかった。


 例え魔王が全身全霊で踏ん張っても、肛門勇者も同じく全身全霊で括約筋を締め上げる。

 ならばと、逆に外からスライムの粘液を塗りたくったイイ感じの棒を突っ込もうとしても、鋼のように固まるのであった。いつの間にか鋼門に進化していたらしい。


 世界にその名を轟かせた魔王も、流石に百年間の糞を溜め続ければ体に異変の一つや二つ、現れてもおかしくない。

 と、ある程度までは予想していた魔王だったが、実際には異変どころか死にかけるまでになっていた。


「魔王様! しっかりしてください! 貴方様がいなくなったら私たちは一体どうすればいいと言うのでしょうか! 」

「すまない……しかし、出ないものは出ないのだ……」

「くそっ! もっと私がしっかりしていれば……! 」

「いや俺がしっかりしていれば」

「いやいやアタシがしっかりしていれば」

「いやいやいやいや僕がしっかりしていれば」


 配下が責任に苛まれる様子を見て、魔王は優しく笑った。


「我の責任だ。お前らは何も悪くない」

「「「魔王様っ! 」」」


 魔王は膨れ上がった腹を重そうに抱えると、ベットから立ち上がり窓辺へと歩いていく。

 窓を開けば、外から木々の新鮮な香りが部屋へ吹き込み、魔王の体に染み付いた糞のエッセンスを拭い去った。


「これで最後か」


 魔王は小さく呟いた。魔王の背後で啜り泣く声がする。


「こんな姿になってまで生きておく必要は無い」


 目を下に向ければ妊婦の如き腹があった。魔王は何かを考えながらお腹をさするが、中に入っているのは紛れもなく糞であることを忘れてはならない。

 再び魔王が話し始めた。


「レーベルト」

「はっ、なんでしょか? 」

「レーベルト。お前は我がこんな姿になっても、ずっと側にいてくれた。お前のような配下をもてて光栄だ」

「……っ! ありがだぎおごどば! 」


 決して魔王には見せまいと、ずっと我慢していた涙が溢れた。ボロボロと涙を流す姿は、日頃の彼の姿からは想像出来ず、彼のプライドを思ってのことか魔王が振り返ることは無かった。


「シーネ」

「まおうざまぁ! ぐすっ、じなないでぐだざい! 」

「はぁ、お前は相変わらず泣き虫だ。勇者との戦いの時も一人部屋の片隅で泣いていたな」

「らっでえ……」

「ほれ、我のハンカチだ」


 シーネは魔王から渡されたハンカチで涙を拭う。しっかりと拭い、次にハンカチをとる時には泣き虫のシーネはいなかった。

 小柄な体躯をめいいっぱい伸ばし、魔王に向かって全身全霊の敬礼する。


「もう泣きません」

「……強くなったなシーネ」


 そう言いながら、魔王の頬には涙が伝っていた。


「ダイデンガルド」

「魔王様、俺は! 」

「言うな。それ以上言うな」


 ぎりぎりと歯を食いしばるダイデンガルド。魔王は彼が恐ろしいほどの戦闘狂であることを知っていた。そして、魔王にとって唯一拳で語り合える仲でもあった。


「ダイデンガルド。もっと高みを目指せ。我がお前に言う言葉はそれだけだ」

「……っ、はぁ。魔王様、いや魔王」


 ダイデンガルドが魔王の前に拳を突き出した。それを見た魔王は一瞬はにかんだかと思うと、魔王らしい睨みをきかせて拳をぶつけた。


「今度戦う時はぜってー勝つからな」

「ふっ、次もボコボコにしてやろう」


 今度がいつ来るかは分からないが、ダイデンガルドは信じていた。ここでくたばるような魔王ではないと言うことを。


 その後も魔王は、配下一人一人の名前を呼び別れの言葉をかけていった。泣くもの笑うもの、色々な感情が顕になったが、唯一共通していた点は、皆魔王のことが大好きだということだろう。

 人間界からは悪の権化と見られている魔王だが、彼の配下にしてみれば一人の偉大な王なのだ。


「ふぅ、アイリス。そこにいるんだろう? 」


 魔王は外を眺めながら、この場に来てないはずの配下の名を呼んだ。

 彼女はこういう場が苦手であったなと、少し悲しくなる魔王。だがしかし、彼女がすぐそばにいることは分かっていた。


「アイリス。結論から言おう。我はお前のことが好きだ」


 部屋の住みに置かれていた空の花瓶が、カタリと動いた。


「うむ、口に出すとなかなか恥ずかしいものだな。しかし、もう時間が無い。アイリス、返事はしなくて良い。だがこれだけは忘れないでくれ。我はお前の笑顔が大好きだ。お前の、いつもはフードに覆われ怯えた顔が、ふとした時に見せる花のような優しい笑顔。お前は気づいていないだろうが、我はその笑顔に何度も救われた」


 再び花瓶が音を立てた。

 いつの間にか配下達が居なくなり、部屋には魔王だけになっていた。

 魔王は、胸ポケットから小さな青い花を取り出した。


「勇者と決戦の日。お前に渡された花だ。花言葉は確か……希望、だったな」


 魔王は花瓶の前まで歩いていく。まるで、そこに誰かがいるかのように。


「今度は我からこの花を渡そう」


 その時、窓から勢いよく風が吹き込んできた。カーテンがはためき、花瓶が床に倒れた。


「魔王様っ……! 」

「アイリス! 」


 魔王の腕に可憐な少女が抱かれている。力強く抱きしめられている。


「魔王様! 私も、私も魔王様のことが大好きです! 」

「アイリス……! くそっ、まだ死にたくない! アイリスと別れたくない! 」


 配下の前では魔王らしく立っていたが、愛する人との別れの前ではただの男であった。


「ぐっ! 」


 ガクリと膝をつく魔王。肉体が限界を迎えていた。


「魔王様! 嫌です、ここで別れるなんて嫌です! せっかくこうして……」

「アイリス。すまない。幸せにしてやれなくて。はっ、かっこ悪いとこを見せてしまったな」

「魔王様はかっこいいです! 誰よりもかっこいいです! だから……謝らないでぐだざい! 私は魔王様のお側にいられて幸せです! 」

「アイリス……」


 魔王は既に限界だった。不死の薬と呼ばれる愛さえも、百年間溜めた糞の前では風邪薬に等しかった。

 それでも二人は諦めない。


「ここで死ぬわけにはいかないのだ……頼む、勇者よ。一度でいいのだ。一度だけ、口を開けてはくれないか」


 肛門が開いた。

 え? そんな簡単に開くの?

 と思った矢先、魔王は悟った。


 ここで出したら人生終わるけど出さなくても人生終わる、と。愛する人の前で脱糞なんて、死を選んだ方がマシだと。

 しかし、愛は不滅だ。もう一度やり直せばいい。


 魔王は考える。止まった時の中で、出すべきか出さないべきかを。

 魔王が顔を上げると、そこには愛する人の泣き顔があった。彼女を汚してまで糞をするべきだろうか。

 そっと彼女の涙を拭う魔王。


 が、体は完全に脱糞態勢。百年ぶりのシャバの空気求めて糞の群衆が外へ流れ出した。

 もはや魔王の意思など関係なし。


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 こうして魔王は、百年ぶりに糞を出し切り、無事アイリスと結婚して幸せに暮らしましたとさ。

 めでたし便でたし。




 後日談。

 魔王が脱糞した部屋は、カチカチの糞によって埋め尽くされ、魔王とアイリスを救出する時もピッケルで掘り起こした程だったと言う。

 ちなみに魔王の肛門には、今なお勇者が宿ったままであり、深刻な便秘に悩んでいる。


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― 新着の感想 ―
クッソ笑いました。
[良い点]  いい意味でくだらなかったです(笑)。  出オチ(笑)、と思いましたが――。  転生ブームの昨今では色色なものが様様なものに転生するので、もう誰が何に転生しても驚きませんが。  勇者が自…
[良い点] 狂気を孕んだタイトルに釣られて読みはじめましたが、お腹がよじれました。 次回作を楽しみにしていますね。
2019/03/01 01:19 退会済み
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