表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

第1話

現代、日本の夜。


「ん〜!講義終わった〜」



明るい街灯の多い道で、1人の少女が伸びをしていた。周りに人が歩いているため、迷惑をかけないように…だが。



「さてと、家帰る前にスーパーに寄らないと」



少女は、歩き出す。大都会の中で生活していた彼女は、現在ひとり暮らしをしている。そのため、食事など自分でしなければならない。



リーーーーーン!



少女が歩き始めて間もない頃、突然耳に鈴のような音が聞こえた。あまりにも大きく聞こえたその音に少女は、足を止めて振り返る。



「なんだろう、鈴の音?でも、鈴ってこんな音出るっけ?」



彼女の疑問は、誰も答えない。というよりも、他の人には聞こえてないのか、立ち止まったのは少女だけだった。



「まぁいいか。えーと…え?」



再び歩み始めようと少女が前を向いた時、視界がおかしく…いや、崩れ始めていたのだった。まるで鏡が割れるように、彼女の視界が崩壊していく。



「え、あ…きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」



視界が崩れ、真っ黒な空間になった途端、彼女は重力に逆らえないように下へ下へと落ちていく感覚に囚われた。そして、そのまま少女の意識は途切れていった。





次に少女が目を覚ましたのは、何処かの建物の路地のような場所だった。そして、夜だった空は明るく色づいている。



「ここ、どこ?」



建物が西洋風になり、空の色も違う。先程までいた場所とは違う場所だとはわかったが、それ以上の情報がない。どうしようかと考えていると、いきなり声が聞こえた。



「おっ!女がいるぜ」


「ホントだな…よお、姉ちゃん。俺たちと遊ばない?」


「え、あの…け、結構です」



少女は、戸惑いながらも断る。しかし、現れた男2人は、少女に近づいてくる。



「大丈夫だって、ちょーっとお茶しないかってだけだからさぁ」



男の1人が少女の腕を掴んできた、少女は咄嗟に「嫌です!」と叫ぶ。すると…



「うわっちち!こいつ、魔法使いか!」


「まほーつかい?」



突然炎が吹き出し、男が手を引っ込める。少女は、聞きなれない言葉に、首をかしげた。



「魔法使いなら、高く売れるな!」


「捕まえるぞ」



男2人が、少女を捕まえようとした…が、その手は届かなかった。2人の間に剣が光っていたからだった。



「お前達、何をしているんだ?」


「げっ!騎士団!?」



剣を向けていたのは、青い制服を着た金髪の青年だった。年は少女と同じくらいだろう。その青年を見た男2人は、慌てて逃げる。



「大丈夫か?」


「はい、ありがとうございます。あの…すみません、ここはの、日本のどこですか?」



差し出された手に引き起こされ、立ち上がった少女が尋ねた。すると、青年は聞き慣れない言葉に首を傾げる。



「ニホン?ここは、アインツベル国の首都ツィーリアだが?」


「あいんつべる?つぃーりあ?」



青年の言葉に、今度は少女が首を傾げた。取り敢えず落ち着く場所まで案内してもらい、話をすることにした。




先程までいた路地裏から、歩いて約5分。喫茶店らしいお店に、2人は入った。青年が窓際の席を勧めてくれたので、そこに座る。



「先ずは自己紹介。俺は、アレックス・ランフォード。この街で白翼騎士団に所属している。アレクと呼んでくれ」



青年ーアレクが名乗ると、少女も慌てて名乗る。



「私は、瑠奈。双葉瑠奈(ふたばるな)です。あ、えーと瑠奈が名前で双葉が家名です。私のことは瑠奈でいいですよ」



少女ー双葉瑠奈がそう名乗ると、アレクは「変わった名乗り方だな」と言った。瑠奈は、外人さんには日本名はおかしく聞こえるもんなーとしか考えてなかった。



「では、ルナ。聞くが、君はどこから来た?何故危険な路地裏にいたんだ?」


「それが…私にもサッパリで…。家に帰る途中、鈴のような音を聞いて気がついたら先程の場所にいたんです」


「アインツベルやツィーリアのことを知らない…君は異世界人か?」


「異世界…確かに、そうかもしれないです。私の知る故郷にこんな大きな街は記憶にありませんから」



アレクの言葉に、瑠奈は頷く。本当は驚きたいが、目の前の状況に頭がついて行かないのだった。そのためか、ある意味冷静だ。



「取り敢えず、君のことについて陛下に進言してみる。今日は、この先にある宿屋に泊まるといい…俺が金を出そう」


「すみません、お世話になります」


「明日、この奥に見えるツィーリア城に来てくれ。俺の名前を出せば通れるようにしておく」



アレクはそう言うと、立ち上がり店を出るよう促した。そして、宿屋の場所まで案内してもらい瑠奈はようやく休むことが出来たのだった。




翌日、瑠奈はアレクに言われた通りに城へやってきた。入口にいる憲兵に、怪しまれる前に「アレックス・ランフォードさんに呼ばれました」と言うと憲兵が慌てて城門を開けてくれた。



「ルナ」


「アレク。お待たせしました、すみません。この後、どうするのですか?」


「奥で陛下がお待ちだ。俺も一緒だからそこまで緊張しなくていい」



アレクの言葉に、瑠奈は驚いてしまう。まさか本当に、国のトップと話すことになるなんて思わなかったからだ。2人は歩きながら、城の奥へと向かう。そして、とても大きな扉が目の前に近づいてきた。



「アレックス・ランフォード入ります」



アレクがそう言うと、扉を開ける。するとそこには、瑠奈は本でしか知らないような謁見室となっていた。



「アレックスよ、その女子が異界人か?」


「はい、陛下。ルナ、こっちへ」



アレクが先に室内に入り、入口付近で躊躇っていた瑠奈は、慌てて中へと入る。そして、失礼のないように頭を下げた。



「よいよい。不慣れであっただろう。ルナとやら…お主はここに来る時鈴のような音色を聞いたと言っておったそうだの」


「は、はい!そしたら、目の前の景色が違くなって…」


「うむ。それはの、異世界召喚だのう。異世界にいる人間をこちら側へと導く魔法じゃ」



王様は、気さくな方のようで気を楽にしていいと言われ瑠奈はホッとした。そして、話を聞くと彼女は故意にこの世界に連れてこられたという訳だ。



「隣国のブァルファルトに、そのような魔法が伝わっていると耳にしたことがある。となると、そなたを召喚したのはブァルファルトだ。しかし、アインツベルにいるとなると何故だろうな。お主が呼ばれた理由はなんだろうな…」



「陛下、昨日のゴロツキがルナが魔法使いと言っていました。しかし、ルナの世界にはそのようなことは無いと…これは1度確かめた方が良いのではないでしょうか」


「なるほど…レイル、アレを」



王様に、レイルと呼ばれた老人が瑠奈の前に水晶を差し出した。何事だとルナが、アレクを見る。



「魔法属性の確認だ。水晶に、手を置いてくれ」


「分かりました」



瑠奈はおずおずと水晶に触れる。すると、いきなり水晶からカラフルな光が何色も光ってきたのだった。



「わぁ!すごい綺麗…7色に光ってる!……あれ?」



瑠奈は、光を見て綺麗だと思ったが周りを見て自分の反応が悪いのではないのかと思い始めた。何故ならば、謁見室にいる全ての人物(紹介はされてないだろうが側近らしい人物達含め)が、ザワザワと話し始めたからだ。



「全属性!?そんなこと有り得るのか?」


「いやしかし、水晶からは7色に光が…」


「前代未聞だ…」



小さく聞こえる言葉に、隣にいるアレクに瑠奈は声をかけた。



「アレク、何かあった?これ、いけないの?」


「いや、俺も驚いているが…つまりはな、ルナ。君は、火、水、土、風、光、闇、無属性の全ての魔法の適合者なんだよ。この世界にそんな人物が現れたということはない。とても珍しいことなんだ」


「ブァルファルトは、魔法適合者の召喚でお主を呼んだようじゃな。目的は侵略か…」



王様の言葉に、瑠奈は「えっ?!」と驚く。侵略…つまりは戦争の道具ということになる。それを考えると、ゾワっとした。



「あの、私に魔法素質があるのはわかりました。でも、まだ使い方とかが分からないので教えて下さい。戦争の道具として呼ばれたなら、その…ブァルファルトに狙われますよね?私は、昨日の今日ですが初めて助けてくれた国を攻撃したくないです!守りたいです」



瑠奈の言葉に、王様は「分かった」と頷く。そうして、瑠奈は取り敢えず街のギルド登録をして、実践で魔法を使う練習をしていくことにした。



そしてしばらくの間、護衛としてアレクが一緒にいることになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ