飛んでいけ
公園で、幼い子供が膝を押さえ泣いている。転んで怪我をしたのだ。痛みに堪えられず、泣く子供の許へ母親が現れ、我が子の膝の傷口を擦りながら言った。
「痛いの痛いの飛んでいけ」
するとどうだ、不思議な事に、それまで伴っていた痛みが嘘のように引き、子供は笑顔になる。
我が子から飛んでいった痛みが、どこかの誰かに移動していったのを知っていた母親だが、相手は所詮見ず知らずの他人である。可愛い我が子が笑顔になったのだ。痛みの行方などどうでもいいではないか。
「さあ、もう痛くないでしょ? 行きましょ」
母親が我が子の手を握り、起こそうとした瞬間、凄まじい頭痛に襲われ、その場に倒れた。
誰かの脳出血の痛みが飛んできたのだ。