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転生・殺人・幻想の現実  作者: 亡霊
序章 始まり、終わらせ、物語は始まる
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第1話 魔導師に導かれ、彼は異世界に転生する。

  本の世界へ行ってみたいと思ったことはないか?と聞かれてnoと答える人は、よっぽど幸福な人生を送っていることだろう。


  俺は昔からファンタジーの世界にあこがれていた。

  仲間たちとともに冒険をして、モンスターと戦ったり、村人を助けたりしながら、最後には魔王を討伐する、そんなことができる世界に。




  「はぁ~」


 一段落ついた原稿を視界から消し、背もたれに寄りかかりながら俺は深い、というか長いため息をついた。


  「書いているときは楽しいのになぁ」


 こんなことを思うのも今に始まったことではないのに。

 俺は中村 正哉 33歳、小説家である。とはいっても、書いているのはこてこての文学小説ではなく、俗にいうライトノベルというやつだ。

 昔からファンタジーの世界にあこがれていて、その手の小説が大好きだったということもあり、そのころからよくやっていたファンタジーな妄想を原稿に書くというのを仕事として、もう10年以上続けている。普通に生活できる程度には稼げているので、この仕事には特に不満はない(締め切りまでの期間を除くが)。

 

 不満があるのはこの世界自体に、だ。


 この世界はあまりにもつまらない。わからないことはネットで調べられ、世界中が家のモニターから閲覧できる、そんな世界の何が面白いのだ。

 俺は、仲間たちと一緒にモンスターを倒したり、村人を助けたりしながら冒険をする。そんなファンタジーの世界に生まれたかったのだ。30歳を過ぎた今でも、もし生まれ変わったら異世界でファンタジーな暮らしがしたいと思っている。


  「まあ、無理だろうけどね」


 締め切りに迫られ、徹夜で執筆をしていたため、頭がクラクラする。無駄なことは思い浮かんでも、書かなければいけない原稿の内容は全然浮かんでこない。

 少し寝て、それからまた書こう。きっとその方が効率的なはずだと、俺は未来の自分に仕事を擦り付け、意識を手放した。



 -------------------------------------------------------------------------------



 …焦げ臭い。俺の目を覚まさせたのは、そんな臭いだった。


  「う、う~ん」


 まだ若干寝ぼけているので、よく周りの状況が分からない。

 寝起きの体でふらつきながら、椅子から立ち上がって周囲を見渡した俺は、焦げた臭いの発生源を見つけた。というか、見つけるまでもなかった。


 部屋が燃えていたのだ。それはもう見事に。


 火元となるようなものはこの部屋にはないはずなので、おそらく近くの部屋から出火した炎が、ここまで移ってきたのだろう。

 もう年だな。20代ならいくら徹夜していても、こんなに火の手が広がる前に、目を覚まして逃げることができただろうに。

 なんてことを思っているうちに、息が苦しくなってきた。いや、だいぶ前からずっと苦しかったのに、今更気が付いたというのが正しいか。

 人生最後の舞台が火の海というのも悪くないな。そんなことを思える程心境は穏やかで、悪あがきをしようとも思わなかった。まあ、やるだけ無駄そうではあるが。

 意識が薄れてくる。炎に焼かれるより、煙に燻製にされる方が早そうだ。

 もし、ここがファンタジーの世界なら、誰かが魔法で助けてくれるかもしれないな、なんて現実逃避しながら、俺は死を受け入れた。

 

 俺、中村正哉は死んだのだ、 このつまらない世界で。



 ------------------------------------------------------------------------------





  不思議な匂いがする。けれど、この匂いを俺はよく知っている。この匂いは…

  目を開けると、そこには不思議な匂いの正体が、視界いっぱいに広がっていた。

  本だ、無数の本が本棚に詰まっている。それだけではない、本棚に入りきらなかったのであろう本がいたるところで塔を築いている。

  落ち着く匂いだ。俺の実家の書斎を思い出すなぁ、なんてことを思っていると、

  後ろから声が聞こえた。

 

  「ヨッシャ!成功じゃ。やはりわしは天才じゃのう」


  ふり返ると、声の主は俺に話しかけてきた。


  「目覚めたようだな。どうじゃ、生まれ変わった気分は?」

 

  いきなり話しかけられても困る。というか、生まれ変わったってなんだ。

  俺は声の主、腰の曲がった半透明の爺さんを、困惑した表情で見つめた。

  そんな俺の表情をどう受け取ったのか、爺さんは、


「おお、そういえば名乗っていなかったな。わしは偉大なる魔導師、グリモアールじゃ。」


 と、口元に笑みを浮かべながら話した。


  おい、さらに疑問が増えたぞ。なんだ、魔導師って。確かにそれっぽい顔しているし、服も上は暗紫色のローブだし、下は足すらないし。

  俺の表情は、困惑から驚愕に変わった。この爺さん、足、ないんですけど。

  もう、なにがなんだかわからない。あまりにも常識離れしすぎている。だからか俺は、無意識のうちに、ごく単純な質問を、爺さん、いや、グリモアールに投げかけた。


  「ここはどこ?私は誰?」


  我ながら、アホらしい質問だが、爺さんは快く答えてくれた。

 

「ここはわしの家のようなものじゃ。そんでもってお前さんはレイス・リライト。わしが転生させた人間じゃよ。ほれ、見てみるとよい」

 

  そういってグリモアールは、いつの間にか持っていた手鏡を渡してきた。俺はそれを受け取ると、鏡に映る自分を見つめた。

  黒髪に黒い瞳で、よく言えば優しい、悪く言えば弱々しい、そんな感じのどこか懐かしい顔が、そこには映っていた。というかこれ、昔の俺の顔なのですが。

 一体なにがどうなっているんだ。今まで、いろいろと考えてみたが、やはり俺がいまどのような状況下におかれているのかが、全くわからない。

  俺が気持ちを表情に出しまくりながら、考えをめぐらせていると、


  「だいぶ困惑しているようじゃな。まあ、それもそうか。わしは転生させた側だから実験の成功に大喜びじゃったが、お前さんはいきなりこっち側に転生させられたのじゃからな。よし、それじゃあ初めから説明してやろう。」

 

 と、グリモアールが言ってくれた。願っても無い話だったので、俺はその言葉に固唾を呑みながら首肯した。



 -----------------------------------------------------------------------------


 



 …と、まあそういうわけじゃ。大体わかったかの?」


  大体わかった。だが、俺はまず、聞かねばならないことがあるだろう。


  「グリモワールさん、つまり俺は剣と魔法のファンタジー世界に16歳の姿で転生した、ということなのか」


  グリモワールはゆっくり頷き、


「そうじゃ、こっちの都合で転生させて悪いと思っておるが、どうせ転生しなかったら死んでしまっていたのじゃし、文句はあるまい」


  その言葉を聞いた俺は、思わずグリモアールに詰め寄った。


「爺さんよくやった!!」


 マジで、本当によくやってくれた。まさか夢にまで見た異世界に転生できるとは。顔が超絶イケメンの金髪美少年じゃないのは残念だが、若返っているのだし文句は言うまい。

 それにしても、本当に異世界に転生できるとは。死んだあといけるなら天国に行きたいと思っていたが、俺にとってここは天国よりも素敵な世界だ。グリモアールさんには感謝してもしきれないな。


  なんてことを思いながら一通り喜んだ俺は、まだ残っていた謎をグリモアールにぶつけた。

 

  「ところでグリモアールさん、なんで俺を転生させたんだ。さっきこっちの都合でとか言っていたし、俺に何かしてほしいことがあるんでしょ。できることなら何でも協力するよ」


  そう、さっきグリモアールさんがしてくれた説明で俺がわかったのは、魔法で異世界に転生した、ということだけなのだ。

 無駄に長かった説明の大半は、転生魔法を完成させるまでの苦労や努力についての話だった。

  具体的な内容はというと、魔法のない世界からきた俺に対して、魔法の理論から語り始め、最終的に、転生魔法がどれだけ難しく、それを成功させた者がどれだけすごいのか、というものだった。

  だから、グリモアールさん自身のことや、俺が転生させられた理由については聞いていないのだ。

 

  グリモアールさん自身のことを俺が知る必要はないかもしれない。幽霊にしか見えない見た目なので、おそらく言いたくないような過去があるのだろう。幽霊になる人はこの世に未練があるって言うし。

  でも、俺が転生された理由は聞かねばならないだろう。そして、できる限り協力したい。それが、この世界に転生させてくれたグリモアールさんに俺ができる唯一の恩返しだと思うから。

  きっと魔王を討伐してほしいとか、この世界を救ってほしいとか、ある財宝を見つけ出してほしいとかの、王道ファンタジー系の願い事なのだろう、と思っていた俺は、ワクワクしながらグリモアールさんの言葉を待った。


  「そうじゃな。どうせ、いつかは言わないといけないことだからな」


 俺の予想とは正反対にグリモアールさんの声は一気に暗くなった。なんでだ、自らが呼んだ転生者に協力すると言われたら、普通は喜ぶものではないのか。

 新たな疑問が浮かび上がるが、グリモアールさんの次の一言で、そんなものは吹き飛んだ。


  「お前さんにわしを殺して欲しいんじゃよ。」



これから、マイペースに上げていきます。

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