昔から、大好きだったのよ
以前短編で投降したものを連載として掲載しています。
私が中学生の時の話だ。
クラスの仲は悪くなかった。毎日が楽しくて、部活と遊びと勉学に努めた時間。
そんな理想的な環境の中で、私だけが普通ではなかった。
それは、友達以上に大切で、大事な人がいた。
たった、それだけのことなのだけど。
私が好きな子の名は、桜子という。
私が最後に桜子と会ったのは中学卒業の時。
この想いが普通ではないことを知っていた私は、最後まで桜子に想いを告げることをしなかった。
中学校を卒業後、私は地元の高校へと進み、桜子は遠くの、いわゆるお嬢様学校の寮へ入ってしまった。
それは私にとてつもない喪失感を与えた。
しかしそれを彼女に言って困らせるわけにもいかず、私は必死に平気ななふりをして毎日を過ごした。
彼女なら、いじめられることもなく、女子高でも楽しくやっていけるだろう。
そう思って自分を励まそうとしたけれど、逆にますます寂しさが募って、悲しくなった。
そして、会いたいという気持ちが年を追うごとに大きく、強くなった。
だからメールを送ろうと携帯を開くことはあった。
卒業式に交換したメールアドレス。
彼女は変わってしまっただろうかとうっすらと不安を感じながら、私はそれに頼るしかない。
しかし、いざ打とうとすると、メールの本文の真っ白な画面に何を打てばいいのか分からくなった。
指はボタンの上をさまよって、何とか打ち出した文字も、ひどく滑稽だ。
打とうとするたびに、思うのだ。今の彼女には、今の友達がいるのだと。
彼女は今、自分の知らない彼女の友達と語らい、笑って、日々を幸せに過ごしているに違いない。
そこに、私が入る余地などないのだ。打とうとするたび、私の暗い部分がそう教えてくれる。
年々溜まっていく想いの大きさと一緒に臆病になっていって、私は桜子と会いづらくなっていく。
結局、そのまま私たちの日常がかみ合うことなんてことはなく、私と桜子は大学を卒業して社会人になるまで、一度も会うことはなかった。
会おうと思えば、会えただろう。
けれど、もし会ってしまったら、この胸に積もった、この強い想いがどうなってしまうのか分からなくて、
怖くなったのだ。