風が出会う時
最近、リハビリです(笑)
もうすぐ、長編の連載も再会させたいと思うので…。
「もう駄目だ…。ここまでやったんだ。悔いはない…」
そう言って、一人の男は公園をふらふら歩いていた。
この男がいる国では王制が敷かれているのだが、なんでも王族の政治がひどく、民衆の生活はとてもひどいものであった。
この男も仕事をなくし、農業を始めたのだが、それも「税」ということで、ほとんどをタダ同然の安価で国から買い上げられてしまった。
それで、もう生きる希望をなくして死のうかと考えていたというわけである。
「ん…?あれは?」
一人の若い女性が、大柄の男と言い合いをしている。
「だから、それは謝ったでございましょう!?しつこいですわね…」
「だから、誤ってすまねぇんだよ!大体、てめぇのその言葉使いがむかつくんだよ!」
「あら、それこそ関係ないでございましょう?それに、私のような女性が、ちょこっとぶつかった程度で痛むような体ではないでしょう」
どうやら、あの女性がぶつかったことに男が難癖付けているらしい。
この国も荒んだものだ。男はそう思っていた。
最後にいいことをしようか、男はそう思い、その二人に近づいた。
「おい、いい男がみっともないぞ。その辺りにしておけ。」
「はぁ?横から口はさむなよ!なんなら、てめぇが慰謝料払うか?!」
大柄な男がそう言った瞬間、男はぶん!と投げ飛ばしていた。
「本当に救いようがない奴だ…」
どすん!と大きな音がして大柄な男は尻餅をついて落ちた。
そして、一瞬、男を睨んだ後逃げるようにその場を去って行った。
女性はぽかんとしていたが、しばらくして男ものもとに駆けていった。
「わぁ!お強いんですのね!ありがとうございます」
「いや、昔、兵隊に入っていたことがあったからな。気にするな。俺はもう行く、じゃあな」
男がそういい残し、その場を去ろうとした時、女性がその男の腕をつかんだ。
「あら、折角ですからお礼をさせてください!それに、あなたが兵隊だった頃の話も聞きたいですし」
「むむ…。俺はそんなお礼されるような奴では…」
「ほらほら、いいですから!」
男が言い終わらないうちに、女性は男の腕をひっぱっていった。
二人はそのまま近くの、服屋に入った。
「まずは、あなたの服を買いましょう。そんな服ではその素敵なお顔が台無しですからね」
女性は、笑顔満天で言った。
「お、俺にはもう服なんて必要な…」
男性はおどおそして言った。
「ほらほら、これなんて格好よくなくって?」
また、男が言い終わらないうちに女性が動き出していた。
その後は、男があれこれ言う暇もなく女性が主導権を握り、一通りの服を選び買ってしまった。
「よ、よく、それだけのお金があったな」
男はもうこのときには、死のうと思っていたことは忘れていた。
「ふふ、お金は一応ありますのよ。それより格好良くなりましたわね。とってもお似合いですわ」
「そ、そうか…。こんな時代なのにすごいな」
「それより、そろそろお腹がすきません?お夕食、食べに行きましょう」
「あ、ああ…」
男は、もう抵抗するだけ無駄だと分かっていたので素直に従った。
もう街は、夕焼けに染まっていた。
「うわぁ…、凄いんですのね。そんなにたくさんの敵の兵士をやっつけただなんて…。やはりお強いんですのね」
「そんなことはない。ただ、人をたくさん殺しただけだ…。自慢できるようなことではないさ」
二人は高級レストランに入り、夕食を楽しみつつ、会話を交えていた。
男はそろそろ、何故こんな若い女性にこんなにたくさんのお金があるのかそろそろ疑問に思えてきた。
「なぁ、君のお父さんは何の仕事をしているんだ?なんで、こんなにたくさんのお金を持っているんだ?」
「え?あぁ…、少し、ぼ、貿易関係のお仕事をしておりますのよ…」
「なるほど…。それなら、金はあろう。俺なんて兵士はくびになり、農業を始めても作物を国に取られ、もう駄目だ。あの王に代わってから、この国は駄目だ」
「あら、今、民衆はそんなに苦しんでらっしゃるの?王…のせいで?」
「ん?君は知らないのか。まぁ、無理はない。さっきの、あの大柄な男も恐らく、なんだかんだ言って、君からお金を取るつもりだったんだろう」
そう言うと、女性はなんだか悲しそうな顔になりうつむいてしまった。
「どうした?君が落ち込むことでもないだろう?」
「え?あ、あ、はい」
「今日は、もう遅い。家まで送ろう。楽しかったよ。有難う」
「いえいえ…」
そして二人はレストランを出た。
「大丈夫ですわ。一人で帰れますから」
「本当か?まぁ、君なら、大丈夫だとは思うが」
男は笑って言った。
「あら?あなたの笑った顔、初めて見ましたわ。その方がずっと素敵でしてよ?」
「え、あぁ、いや…」
男は、赤面した。
「きっとまた、二人は会うことになるでしょう。その時は、あなたをずっと笑顔にさせられます」
女性は、男の顔を見て、はっきりといった。
「あぁ、また…会えたらいいな」
男がそういうと、女性は、ふふっと笑いその場を去っていった。
「さて、俺も明日から頑張るか…。死んだら、あいつになんて言われるやら…」
男は自嘲気味に笑い、歩いていった。
「姫!探しましたよ!勝手に出かけられては困ります!」
大きな車の窓から、年老いた男が首を出していった。
「わ!ばれたの!?折角、変装して外出してきたのに…」
「あなたを幼少から見ている私にそんな変装は無意味です。さぁ、城へ帰りましょう」
「ふぅ…。分かったわ。今日は十分楽しんだしね」
そう言って、女性は車へ乗り込んだ。
「ねぇ…爺。私、もうお見合いの必要ないわ…」
女性は悟るように車を運転している、年老いた男に言った。
「どういう意味でしょう。姫…」
男は表情を変えずに言った。
「もう結婚する人決めたもん!私はこの国を変えるわ!」
女性の目は輝いていた。
そして未来を見据えていた。
それから数年後、立派な王と姫によりこの国が変わるのだが、それはまだ先の話。
楽しんでいただけたでしょうか?
それならば、幸いです☆