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信じていた仲間に処分された俺、禁忌スキル《奪還の王》で最強になる ~奪われた力も居場所も、今度は全部取り戻す~  作者: 夜天 颯
第三章 帰る者

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50. 休む理由

素直にそう言うと、ノアが答える。


『推定通りです』

「今それいる?」

『必要な確認です』

「便利だなお前」


 セレスも壁にもたれながらゆっくり座る。

 まだ顔色は完璧じゃない。でもさっきの戦闘では、ちゃんと援護もしていた。


「大丈夫か」

「奏真こそ」

「俺は聞いてる側なんだよ」

「今のは奏真のほうが危なかった」

『同意します』

「ノア、お前は今日は本当にそっち側なんだな」

『事実に基づいています』


 奏真は苦笑して、水を一口飲んだ。


 部屋の中には静かな空気が流れている。

 奈落の底とは思えないくらい、今は落ち着いていた。


「……なあ」

 奏真はぼんやり天井を見ながら言う。

「何?」

 セレスが小さく返す。


「三人って、変な組み合わせだよな」

『定義が曖昧です』

「そういう意味じゃないんだよ」

「でも、変なのはそう」

 セレスが静かに言う。

「奏真は奈落に落とされた人」

「雑に言うとそうだな」

「ノアはこの施設の子」

『管理補助個体です』

「セレスは、封じられてた子」

「その言い方もだいぶざっくりだな……」


 でも間違ってはいない。


 奈落の底で出会った三人。

 理由も立場も全部バラバラだ。まともじゃない。けれど今は、同じ方向を向いている。


「悪くはないけどな」

 奏真がそう言うと、セレスの目が少しだけやわらぐ。

「うん」

『現時点での連携効率も悪くありません』

「お前は本当にそういう言い方なんだな」

『問題がありますか』

「問題というか、もうちょっとこう……」

「ノアっぽい」

 セレスが先に言った。


 奏真はその言葉に、少しだけ笑う。


「確かに」

『肯定します』

「お前まで肯定するな」


 少しだけ沈黙が落ちた。


 その沈黙は重くない。

 ただ、疲れた体を休めるための静かな時間だった。


 奏真は壁に頭を預けながら、ぽつりと言う。


「……地上、どうなってるんだろうな」


 セレスが顔を上げる。

 ノアもこちらを見る。


「神崎の理由はまだわからない。でも、あいつが落としたのは事実だ」

 そこまではもう揺るがない。

「王国と教会も、たぶん噛んでる」


 ノアが短く言う。


『高確率で』

「だよな」


 奈落の古代施設。

 歪められた術式。

 奪還の王への反応。

 全部を考えると、奏真をただの補助要員として置いておくつもりじゃなかったのは明らかだ。


 そしてその先にあるのは、きっと地上の現実だ。


 今、自分がどう扱われているのか。

 神崎が何を言ったのか。

 王国と教会が何をしたのか。


 まだ見えない。

 でも、嫌な形になっている気はしていた。


「……まあ、考えても今は仕方ないか」


 そう言って、自分で少しだけ驚く。


 前ならもっと神崎のことを引きずっていたかもしれない。

 でも今は違う。気にならないわけじゃない。むしろずっと引っかかっている。けれど、その“わからなさ”に飲まれっぱなしではいなくなってきた。


 今は進む。

 まずは奈落を出る。


 その先で、ちゃんと見ればいい。


「奏真」

「ん?」

「さっきの戦い」

「守護体のことか?」

「うん。すごかった」


 セレスの声は静かだった。

 でも、妙にまっすぐで、変に照れくさくなる。


「いや、ノアの援護があったからだろ」

『最終打撃と流れの制御はあなたの成果です』

「お前も今それ言う?」

『評価です』

「最近ほんと便利だな」


 セレスが少しだけ身を乗り出す。


「奏真は、返してた」

「……見えてたのか」

「少しだけ。壊すんじゃなくて、ずれてたものを戻してた」

「お前、そういうとこはちゃんと見てるんだな」

「奏真のことは見る」


 一瞬、言葉が止まる。


「いや、そういう言い方すると重いんだって」

「重い?」

「本人に自覚がないのが一番強いな……」

『依存傾向』

「だからお前は今黙れ!」


 思わず大きめの声が出た。


 部屋の中に笑いが落ちる。

 セレスの肩が少しだけ揺れ、ノアは相変わらず真顔だったが、それでも空気はちゃんとやわらかかった。


 奈落の底。

 戦いのあと。

 それでも、こうして少し笑える。


 そのことが妙に救いだった。


 奏真は深く息を吐き、ゆっくり目を閉じる。


「……三分だけ休む」

『測定します』

「本当に測るなよ」

『必要です』

「やるんだろうなあ……」

「三分で足りる?」

 セレスが聞く。

「足りなくても進む」

「たまに、そういうところよくない」

「お前も最近ちょっと言うようになったな」

「学んでる」

『良い傾向です』

「お前はほんと楽しそうだな」


 返しながら、奏真は少しだけ笑った。


 目を閉じると、青い光の明るさがまぶたの裏に残る。

 深部制御核まで、もう少し。


 そこを越えれば、奈落を出るための道に手が届く。

 神崎の理由も、地上の真実も、まだ先だ。


 けれど今は、この三人で前へ進めている。

 それだけで、奈落の底は昨日までより少しだけ狭く見えた。

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