表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪された悪役令嬢ですが、帳簿を燃やした王都が先に滅びそうです 〜追放先の辺境で実務改革を始めたら、国家より信用が強くなりました〜  作者: 篠宮しずく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/27

第9話 王都、徴税を強化す

王都の空気は、どこか重かった。


「……今月の税収が、また下がっています」


財務省の会議室で、官吏の一人が恐る恐る報告する。

長い机を囲む者たちの視線が、一斉に財務大臣ギルバート・ヴァイスへ向いた。


「原因は?」


「地方からの納付が、鈍っています。

特に……辺境方面が」


その言葉に、室内が静まり返った。


「辺境?」


ギルバートは、眉をひそめる。


「なぜだ。増税通達は、確実に出したはずだろう」


「それが……徴税官が、戻ってきません」


「戻ってこない?」


官吏は、唾を飲み込む。


「拒否、というわけではありません。ただ……

『現地の帳簿が合わない』と」


一瞬、ギルバートの顔が歪んだ。


「帳簿?」


その単語が、頭の奥を不快に刺激する。

思い出したくない名前が、自然と浮かんだ。


(……ヴァンローゼ)


「そんなものは、現場で調整すればいい!」


ギルバートは、机を叩いた。


「数字など、後から合わせろ。

重要なのは、今月分の現金だ!」


沈黙。

誰も、反論しない。


反論できないのではない。

数字を理解できる者が、もうこの場にいなかった。


---


同じ頃。

王城の一室では、別の会話が行われていた。


「殿下……財務省が、増税を検討しているそうです」


伯爵令嬢セシリア・ルノワールは、心配そうに言った。


「それは……民の反発を招くのでは?」


「必要なことだ」


王太子アルベルトは、即答した。


「国を守るためには、我慢も必要だ。

多少の不満など、いずれ収まる」


セシリアは、ほっとしたように頷く。


「さすが殿下です。

皆、殿下の誠意を理解してくれると思います」


アルベルトは、その言葉に満足げだった。


――理解する。

その言葉の意味を、彼は深く考えたことがない。


---


翌日。

王都の街角で、張り紙が増えた。


【王室勅令】

【臨時徴税の実施】


人々が、足を止める。


「またか……」

「この前も、上がったばかりだぞ」


小さな不満が、確実に溜まっていく。

だが、それを数字として捉える者はいない。


財務省では、帳簿の数字が無理に整えられていく。


(足りないなら、絞ればいい)


そう考える人間しか、残っていなかった。


---


数日後。

一通の報告書が、財務大臣の机に置かれた。


「……辺境伯領、グラウフェルト」


ギルバートは、眉をひそめて中身を見る。


税収は、予定より少ない。

だが――


「……現地の支払い遅延、ゼロ?」


思わず、声が漏れた。


「給金も、公共費も、滞りなし……?」


あり得ない。

増税され、圧迫されているはずの土地が、

なぜ、こんなにも整っている。


(……誰が、やっている)


答えは、分かっている。

だが、認めたくなかった。


ギルバートは、報告書を乱暴に閉じた。


「……調査を強化しろ」


焦りが、声に滲む。


その頃、辺境では。

役人たちが、予定通りに帳簿を閉じていた。


数字は、嘘をつかない。

だが、嘘をつく人間は――数字に追い詰められる。


王都では、まだ誰も気づいていなかった。


この増税が、

自分たちの首を絞める最初の一手になることを。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ