第27話 参加したい領地
訪問は、正式な外交文書ではなかった。
「……面会希望、ですか?」
ユーリが差し出したのは、簡素な書簡だった。
装飾も、王印もない。
だが、差出人の名は軽くない。
「自治都市ラドウェル評議会代表」
「小領主同盟、調整役を兼ねているそうです」
私は、封を切らずに言った。
「目的は、分かっています」
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面会に現れたのは、三人。
一人は自治都市の代表。
一人は農地を持つ小領主。
もう一人は、実務担当らしい若い男。
全員が、同じ緊張を帯びている。
「……本日は、お時間をいただき感謝します」
代表が、慎重に言葉を選ぶ。
「率直に申します」
「我々も、貴領の“信用証書”に参加したい」
来た。
「理由は?」
私が尋ねると、彼は少し間を置いた。
「王都の制裁で、物流が不安定になりました」
「だが……貴領は、影響を受けていない」
「正確には」
私は、淡々と訂正する。
「受けています」
「ただし、止まっていません」
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「条件は、何でしょうか」
小領主が、思い切ったように口を開く。
「王都への忠誠は、捨てられません」
「だが、取引の安定は必要です」
その言葉に、ユーリが一瞬息を呑む。
私は、首を横に振った。
「両立は、できません」
沈黙。
「我々は、反乱を望んでいるわけでは――」
「分かっています」
私は、遮らずに言う。
「ですが、信用圏は“中立”ではありません」
「……どういう意味ですか」
「約束を守るかどうかで、線を引きます」
「王都の命令で、契約を破る可能性があるなら」
「最初から、入れません」
若い実務担当が、思わず声を上げる。
「それでは、危険すぎる!」
「ええ」
私は、頷いた。
「だから、価値がある」
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代表は、しばらく黙り込み――
やがて、苦笑した。
「……厳しい」
「条件は、同じです」
私は、書類を一枚差し出す。
「帳簿の開示(限定)」
「契約遵守の優先順位」
「第三者監査の受け入れ」
「……主権に、踏み込みますね」
「制度に、踏み込みます」
私は、淡々と答える。
「支配はしません」
「ですが、信用は管理します」
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面会の終わり。
三人は、重い足取りで席を立った。
「すぐには、決められません」
「当然です」
私は、引き止めなかった。
「急がせると、歪みます」
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扉が閉じた後。
ユーリが、少し不安そうに言う。
「……断られるかもしれません」
「ええ」
私は、否定しない。
「半分以上は、来ません」
「それでも……?」
「それでも、十分です」
私は、帳簿を閉じる。
「信用圏は、数で作りません」
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夜。
執務室で、地図を眺める。
点が、いくつか浮かんでいる。
参加を迷う領地。
参加を諦める領地。
(全て、想定内)
大きく広げれば、崩れる。
狭く保てば、強くなる。
私は、欄外に一行書き加えた。
「――参加条件、変更なし」
選ばれる場所になるには、
選ぶ覚悟が要る。
それが、この圏の最低条件だった。
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