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破花絵合わせ

 拙者が仕え奉るお方――我が殿は、名君とも暴君ともつかぬ、まこと灰のごとき御政道をなされる御方にござりまする。 されど、ただ一つ、尋常ならざる癖をお持ちにござる。

 それと申すは――殿は時折、奇怪なる夢を御覧じ、それを「天の御啓示なり」と信じて疑わず、法や政をみだりに動かされるのでござりまする。

 けふもまた、斯様な騒ぎが――起こり申した。




「此度の戯れごとは、賭札――『破花絵合わせ』にて興じようぞ」


 と殿は申され、見たことも聞いたこともない、絵柄と記号が刻まれた五十と二枚の紙札を、我らにお配りあそばされた。


「破花絵合わせ……とは、いかなる博打にござりまするか?」


「案ずるな。今宵は無礼講じゃ。儀礼は捨てい」


 かくして我ら家臣一同、六つ時をかけて殿よりその札遊びの秘伝を学び申した。

 ようやく勝負が成り立ち申したその時に――



「殿、驚かれませぬよう……拙者の札は、いわゆる『王道五連剣ろいやるすとれえとふらつしゆ』にてござります。 ここは御身のため、勝負より手を引かれるが賢明かと存じます」

 と、拙者は申したれども、殿は泰然としてお答えになった。



「構わぬ。いざ並べてみよ」

 されば拙者は、紅の記を帯びた札――…… 十の数札より、従者札・姫札へと順に並べて見せ申した。

 しかし、拙者の手札は揃っておらず、見栄や張ったりは殿には通じず、しかるに、殿は高らかに笑われる。


「……夢にて見し通りじゃ。そち、目先の利に溺れおったわ」


「い、いかなる意味にござりまするか……!?」


「千年の後、御告げがこう申しておった。 ――“欲に塗れし者のとらんぷに、はあときんぐは、似つかわしゅうない”――とな……」


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