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大器の者

 拙者が仕え奉るお方――我が殿は、名君とも暴君ともつかぬ、まこと灰のごとき政をなさる御方にござりまする。 されども、ただ一つ、尋常ならざる性癖をお持ちにござる。

 と申すは――殿は時折、奇怪なる夢を御覧じ、それを「天よりの御啓示なり」と思い込まれては、法と政を大いに掻き乱すのでござります。

 今朝もまた、斯様な騒ぎが起こり申した――。



「殿、岩手国水沢郷守殿の御嫡男にございますが、治水のみならず築城の技にも興味を示されておりまして、将来は城造りにも携わりたき旨、申しておりました」


「止めておけ。『二兎を追う者は一兎をも得ず』と申すであろう。的を一つに絞らねば、才も腐るわ。 どちらかを断念いたせ、と申し伝えよ」


「はっ。御意にござりまする」


「……ん? 待て、それなる御嫡男、誰の子と申した?」


「大谷岩手国水沢郷守にござりまする」


「なにぃ!!? いかんいかん!! 両方ともやらせい!!」


「と、突然何事にござりまするか!?」


「大谷じゃぞ!? 岩手国水沢郷の大谷と来たか!! それなる者、必ずや一つに留まらぬ器なり! “複数の芸事を同時に極める者”に決まっておろうが!! 千年の後には、日本一国に納まりきらぬ男となるわ!!」


「千年後……大谷殿が、何か謀反を!?」


「否! 逸材なのじゃ! 両方やらせい! 否、三つでも四つでもやらせておけ! あの者、尋常ならざる大器よ! やがては、我が国の民が『大谷殿の飼い犬になりとうござる』などと口走る日も来ようぞ!!」


「殿! 大谷殿が何をなさるというので!?」


「よいからーーー! 殿の申すことをーーー聞かぬかーーー!! 『でこぴん』を食らわせるぞ!!」


 斯様なことを申され、我ら家臣一同、殿より額を小突かれ申した。 まこと、我が殿の無節操さには、呆れるばかりにござりまする……





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