表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/68

ep8 研究所?

 *


 日も暮れて、仕事が終わる。

 早速、青年はその場所に向かって歩いていた。

 体はクタクタだったが、先延ばしにはできない。

 

「ここは、行くなら行くで一分一秒でも早いほうがいい。中途半端に遅れるぐらいなら行かない方がいい」


 徳富大成の考えはシンプルだった。

 このような判断力と行動力は、彼の強みとも言える。


「聞いた場所はここ......だけど、本当にここなんだよな?一応、雑な手書きの表札はある。ビーチャム魔導研究所......」


 目的の場所を目の前にして、不安そうに呟いたのにはワケがある。


「マジで、オンボロなんだけど......」


 一階建ての褪せた廃屋の如き建物には、所々に苔が生えており、とてもじゃないが「研究所」には見えない。

 もはや打ち捨てられた倉庫、といった方が適切かもしれない。


「食堂のおばちゃんが知ってるぐらいだから、町でも有名って考えていいよな。元々、王都でも有名な若き魔導博士だったとも言ってたし。それなのに、これか」


 考えれば考えるほど疑問と不安が増していく。

 しかしこんな所でぐずぐずしていても時間の無駄なだけだ。

 そう言わんばかりに勢いよく扉をノックした。


「すいませーん!こんばんはー!ビーチャムさーん!昨夜、町の外で貴方と会った者でーす!すいませーん!」


 返事がない。

 ぴしゃりと雨戸ごと締め切られた窓からは中の確認もできない。

 本当に人がいるんだろうか?

 そんな気さえしてくる。


「すいませーん!ビーチャムさーん!すいませーん!」


 ドンドンドンドン!と扉を叩いた。

 声量も上げた。

 布団を被って熟睡していても叩き起こされるレベルだ。

 ところが、一向に反応はない。

 このままではラチがあかない。

 ならば...と決心した。

 次の呼びかけで出て来なかったらもう帰ろうと。

 大きく息を吸って、口をひらく。


「出て来いコラァァ!!この三流貧乏自称博士がぁぁぁ!!」


 数秒後。中からドタドタと物音が聞こえてきたと思ったら、バーンと勢いよく扉が開いた。

 大成は思わず身を退いてドアの直撃を避けた。


「僕は正真正銘魔導博士だ!自称などではない!」


 白衣の男が、もっさりとした銀髪を振り乱して物凄い剣幕で出てきた。

 徳富大成の思惑通りだった。

 暴言は見事に()()()()()()ようだ。


「やっと出てきたか。俺だよ。約束通り来た」


「ん?貴様は......」


 白衣の男は、視力の悪そうな目を細めてじ〜っと見てくる。


「誰だ?」


「俺だよ!昨日の夜、町の外の林の中で会ったろ?アンタから言ってきただろ?ここに来いって」


「そうか。どこかで見たことがあるかと思ったが、昨夜の貴様だったか」


「そうだよ。話をしに来てやったんだ」


「遅い」


「は?」


「明日来いと、僕は言ったはずだ」


「だからこうして来ただろ!?」


「普通、明日来いと言ったら、少なくとも翌日の日中には来るものだろう」


「仕事があるんだよ!それぐらい言わなくてもわかんだろ!」


「言わなくてもわかる?僕は心を読む魔法など使えないぞ?」


「こ、こいつ......」


「まあいい。とりあえず中に入れ。遅くなった事は横に置いといてやる」


 大成は、拳をぎりぎりと握りしめながら思う。

 こいつは変人でもマッドサイエンティストでもない。

 ただの礼儀を知らない失礼な、社会性の欠落したクソヤローだ!

 と、自分から暴言を吐いた事はしれっと忘れる徳富大成に、白衣の男は言った。


「たっぷり聞かせてもらうぞ。『スマホ』とやらの話を」


 一瞬、大成はピタッと静止する。

 白衣の男はにやりと薄く微笑し、先に中へ入っていった。

当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

面白かったら感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

気に入っていただけましたら今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ