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異世界営業〜大事なのは剣でも魔法でもない。営業力だ!  作者: 根立真先


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55/68

ep55 訓練場

 ギルドの地下にはガランとした殺風景な倉庫のような空間がある。

 そこは魔法による特殊な加工がなされており、相当程度の衝撃に耐えうるよう設計されていた。

 

「ここは所属魔導師のみが使用できる当ギルドの訓練場だ」

 

 ハモンドソンの説明を聞き、ナナラは目を輝かせる。


「地下にこんなスペースがあったなんて!」


 相変わらず呑気な態度のナナラに向かい、レッドは殺気立った眼つきで睨みつける。


「ここなら遠慮なくオレの炎魔法でテメーを焼き殺せるってことだ」


「いいからお前はキースくんにあやまれ」


 ナナラも負けじと睨み返す。

 そのままバチバチと火花を散らす二人を、ハモンドソンが指定した位置に立たせた。


「私が試合開始のコールをするまで待ちなさい」


 訓練場の中心にハモンドソンが、やや距離を空けてナナラとレッドが向かい合う。

 そこから十数メートル離れて彼らを囲むようにギャラリーが並んで立っている。

 その中に大成とビーチャムもいた。


「魔導師同士の試合かぁ。どうなるんだろ」


「おいタイセー。本当にこんなもの見ていくのか」


「見る機会もないからな」


「見る必要もないだろう」


 ビーチャムがうんざりしながら言う。

 しかし大成には見ておきたい理由があった。


「ナナラも新人魔導師なんだよな」


「奴はダメだ」


「まだ何も言ってないだろ?」


「僕はあういう頭を使っていないような人間は受けつけない」


「まあビーチャムとは対照的だろうだけど......」


 それでも大成は一度、ナナラと面談してみたいと考えていた。

 どうしてか?


 実はつい先ほど、大成はキースに近づき「なんでこんなことになったのか、詳しく教えてくれないか?」と、この一件の事情を聴取していた。 

 大成の質問にキースはこう答えた。

 

「以前から、ぼくはレッド君に見下されていて、バカにされていたんです。でもさすがに殴られたりすることまではありませんでした。

 ところがです。今日はタイセーさんたちとの面談の後、レッド君かなり荒れていて、ぼくへの当たりもいつも以上にキツくて、ついには暴力まで振るわれたんです。暴言もいつも以上に酷くて。先輩たちも止めに入ってくれたんですけど、それでもレッド君は止まらなくて。


 え?暴力と暴言はどんなものだったか、ですか?


 蹴り飛ばされて床に倒れたところを何度か踏みつけられました。でもさすがに加減はしてくれていたとは思います。本気のレッド君はすごく強いですから。

 あと暴言ですよね。言われたのは、ボクが魔導師オタクのことです。気持ち悪いとか、恥晒しだとか、そんな理由で魔導師やるなクズとか、そんなところです。

 あとは、等級のことも言われました。そもそもC級のくせにギルドに入ってくるんじゃねえとか、役立たずとか、出来損ないとか、才能ないんだからとっとと魔導師なんか辞めちまえとか......。


 暴力を振るわれたのもショックでしたけど、言葉の暴力もショックでした。

 もちろんぼくだって自分のことはわかっているつもりです。大した才能がないってこともわかっています。でもだからといって、あんなふうに面罵されるいわれはないはずです。

 でも、ぼくにはレッド君にやり返すだけの力も心の強さもなくて......。


 そんな時です。

 ナナラさんが颯爽とやって来て、強引にレッド君をぼくから引き離したんです。

 その時びっくりしたのはぼくだけじゃありません。近くにいた先輩たちも、当のレッド君も驚いていました。

 そしてナナラさんは、何もできなかった情けないぼくの目の前に立って、レッド君に立ちはだかってくれたんです。 

 それからナナラさんはレッド君に向かってこう言いました。

 彼に吐きかけた暴言を取り消せって。その上で謝れって。じゃないとわたしがお前をぶっ飛ばすって。

 まるでぼく以上にぼくのことで怒ってくれているみたいに......」


 この話を聞いて......なぜだか大成は、ナナラに強い興味を惹かれたのだった。

 ナナラという魔導師...あるいはナナラという人物を、見極めてみたい。

 そう思いながら、大成は彼女の行方を見つめていたのである。

当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

面白かったら感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

気に入っていただけましたら今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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