ep54 モメていたのは
ハモンドソンたちと一緒に大成たちも一階へ降りていくと、酒場スペースの一角が荒れていて、二人の者が何やら揉めていた。
大成とビーチャムは思わず目を見張る。
両者とも面識のある魔導師だったから。
「ハモンドソン代表」
ギルドスタッフらしき真面目そうな魔導師がハモンドソンに駆け寄ってきた。
「いったい何があったんだ?」
「それが新人同士での小競り合いがきっかけでああなってしまったようで」
「新人同士?片方はレッドだが、もう一人は誰だ。うちにいたか?」
「いえ。彼女は今日やって来たばかりの、当ギルドに所属を希望する新人魔導師です」
「まだ手続き途中ということか」
「というか、彼女には当ギルドの入会規定にそぐわない部分がありまして」
「それはどういうことだ?」
「すいません。今はそれよりも彼らを止めるほうが」
「そうだな」
ハモンドソンは少しだけ考えてから、揉めている二人のもとへ歩み寄っていった。
当人たちはギリギリと睨み合っている。
「テメー。これ以上チョーシに乗るとマジでブッ殺すぞ」
「悪いのはそっちだよ。あやまれ」
「お前たちそこまでだ」
ハモンドソンが割って入ると、レッドは舌打ちして拳を下げた。
「なんですか」
「レッド。何をやっているんだ」
「何をやっているも何も、この女が部外者のくせに口挟んでくるから文句言ってやってるだけですよ」
レッドの説明に頷きもせずに、ハモンドソンは女の方に視線を移した。
「私は当ギルド代表のハモンドソンだ。君は?」
「だ、代表!?」
途端に女は恐縮しだしてあとふたとする。
「わ、わたしは魔導師のナナラ・ローパーです。ギルドに入りたくて本日はやって参りました。よよよろしくお願いします」
「ではローパー君。君はなぜレッドと争っているんだね?」
「それは」とナナラは別方向を指さした。
そこには尻もちをついているマッシュルームヘアーのキースがいた。
「赤髪のヤツが彼をバカにしてイジメていたからです」
「つまり......レッドがキースを馬鹿にしてイジメているところを君が注意した。それがきっかけとなりレッドと君の争いに発展したと」
ナナラは大きくこくんこくんと頷く。
「ちょっと待て」
そこへやはりレッドが異議を挟んできた。
「これはもともとオレとキースの問題だ。そこへ関係のないテメーが割り込んできただけだろ。テメーは部外者だ。とっとと出ていきやがれ」
「いやだ。あんなの見てて放っておけないよ。部外者だとかなんとかは関係ない」
ナナラもまったく譲る気はないらしい。
二人はまたしても一色触発で睨み合う形となる。
どうなるんだろうと周囲の人間が見守る中、ハモンドソンはなぜかニヤリと微笑を浮かべた。
「わかった。それならば、今から二人には試合をしてもらうというのはどうだろう?」
ギルド代表魔導師の予想外の提案に、当人たちも含めて皆、意表を衝かれる。
「あの、代表。それはどういうことでしょう」
思わずギルドスタッフの魔導師が質問すると、ハモンドソンはレッドとナナラへ交互に試すような視線を送る。
「レッドが勝てば、ローパー君は謝罪した上でここを去る。反対にローパー君が勝てば、当ギルドの入会規定に関わらず彼女を我々の一員として迎え入れよう」
その言葉を聞き終えた瞬間だった。
誰よりも先にナナラが興奮して声を上げる。
「ほ、本当にいいんですかぁ!?」
「代表の私が言ったんだ。もちろんだ」
ハモンドソンは笑顔で頷いた。
「やったぁー!!」
喜びを爆発させるナナラ。
その態度は確実にレッドの怒りの火に油を注いだ。
この女、マジでナメてやがる。
もうブッ殺すしかねえ。
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