表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/68

ep4 手違い

「どうしましたか?」


「いや、なんでもないよ」


「では、お話を続けましょう」


「わかった。飛ばしてくれ」


「はい?」


「どうせもう戻れないんだろ?だったらさっさと連れてってくれ。その世界に」


「良いのですか?」


白々(しらじら)しいな。どの道それしか残されてないんだろ?今の俺には」


「さすがは徳富大成様。賢い方です。やはり(わたくし)の目に狂いはなかった」


「つまらないお世辞はいいから」


「かしこまりました。では早速、貴方をお運びいたしましょう」


「ちなみに、どんな世界なんだ?」


「そうですね。わかりやすく言えば、ファンタジーな世界です」


「ファンタジー?まさか、魔法が存在したりとか?」


「そのまさかです」


「ま、マジか!じゃあ、俺も魔法が使えんのか!すげえ!」


「ひとつ、徳富様に謝っておかねばならないことがございます」


「な、なんだ、突然」


「実は手違いがございまして」


「一体なんの話だ?」


「本来、貴方は()()するはずでした」


「え?どういう意味?」


「つまり、貴方は()()()()だったのです」


「は??」


「女性を助けた貴方は、本来あそこで死ぬはずでした。ところが手違いで、貴方は死なずしてここに来てしまった」


「いや、ちょっと待ってくれ。つまり、俺が生きたままここにいるのは、手違いだったってこと?」


「はい」 


「となると、貴女が俺の命の恩人というのも、結果的にそうなった、というだけじゃないか」


「結果的にそうなれば、それが事実ではないのですか?」


「それはそうだけど......」


「話を戻します。徳富大成様。貴方は転生先の世界...否、転移先の世界で、本来は与えられるはずだった力を、与えられなくなってしまったのです」


「......つまり、俺はどうなるんだ?」


「本来持ち得たはずの、賢者レベルの魔法能力は一切得られず、まったく魔法の使えない人間として転移されます。つまり、ほぼ今まで通りの貴方のままです」


「それって......ファンタジーな世界で、不利だよな?」


「ええ。しかしご安心ください。その世界は、すでに大きな戦争が終わったばかりです。当分の間は平和だと言えるでしょう」


「ちょっと待て。転生女神テレサ。あんたは最初、その世界の人々を豊かにしろと言ったよな?それが俺の使命だって」


「ええ。それがなにか?」


「それって、本当は魔法の力で何とかする想定の使命だったんじゃないのか?」


「そうですね」


「そうですね、じゃないわ!ただの一般ピーポーな俺が、そんなファンタジー世界に行って何ができるんだよ!?」


「徳富大成様。貴方にはあるじゃないですか」


「何がだよ?」


「営業力が」


「ファンタジー世界でそんなものが役に立つかぁ!」


「そうとも限りませんよ?やり方次第では、魔法なんぞよりもよっぽど希望のある力になり得ます」


「くっ、納得できない」


「それに、まったく特別な力がないというわけでもありません」


「な、何かあるのか!?」


「言語能力です」


「は?」


「転移先の世界では、当然のことながらまったく異なる言語が使用されています。しかし徳富様は、何の問題もなく、今まで通り日本語を使用するのと同様に、転移先の世界の言語を操ることができます」


「そ、それは、確かに役立つけど......」


「というわけで、私からは以上です。さあ、新たなる世界へ、旅立ちの時です」


「もう?ま、まだ心の準備が」


「さっさと連れて行ってくれと仰ったのは貴方でしょう?さあ、行くのです」


「いや、ちょっと待って...」


「行きなさい。徳富大成よ。そして、崇高なる使命を果たすのです。さすれば、元の世界へ戻して差し上げましょう」


「えっ?俺、日本に戻れるの!?」


「使命を果たせば、です。その時は、あの時に死ななかった世界線の未来へ、貴方をお連れいたしましょう」


「マジか。てゆーかそれ最初に言えよ!なんか騙されたみたいだぞ!というより騙しただろ!?」


「もう遅いです。さあ、行くのです!」


「あっ、あ、う、うわぁぁぁぁっ!!」



 青年は、神秘的な光と共に何処(いずこ)へと消えていった。

当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

面白かったら感想やいいねなどいただけますと大変励みになります。

気に入っていただけましたら今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ