究極の田舎暮らし
前回からだいぶ間が空いてしまいました。
ほのぼのというか脱力系というかそんな感じです。
天気が良かったので近くの草原で横になっていた。
そよ風がとても心地よい。
空を動く雲を見るともなく見ている。
「先生、どこですか~。お客様が来ましたよ~」
やれやれ、もう少しゆっくりしていたかったなあ。
「あ、先生、行き先は言ってくださいよ~」
「誰にも邪魔されたくなかったんだよ。最新理論のこととかな」
「半分はさぼりたかったんじゃないですか~」
当たりだ。
「お客さんは子爵かい」
「ご本人なので、いないって言えませんでした~」
家に戻ると子爵と従者が待っていた。
「失礼、少々外しておりました」
「こちらこそ、忙しいところをすまない」
弟子が飲み物を用意する。
「御用をお伺いしましょう」
「先生なら聞いているだろうが、最新理論のことだ」
最新理論、並行世界の存在の話だ。
「王や宰相は何と?」
「うわさ話につき合うつもりはないが、まずは人心を安定させたいとのことだ」
「そうでしょうな。それで子爵は?」
「私も見たのだよ、まぼろしの街を。森の木々より高い建物、馬より早い乗り物。領民の話は本当だったようだ」
まだ子爵の領地だけだが、そのうち他の地方にも広がるかもしれない。
「下手をすると私のせいにされかねない」
その可能性はある。
「私としては、並行世界を見て研究したいという気持ちがあるのですがね」
子爵は肩を落とし、
「先生の研究熱心はわかるが、なんとかこの現象を止めることはできないか」
領主の立場であればもっともだ。
「止められるかどうか。まずは様子を見てみましょう」
翌日、子爵の領地で調査を始めた。
集中したいからと、供も連れず一人で行動する。
しばらくすると空間が二重になり、近代的な都会の姿が現れた。
「ここまではっきり見えたらうわさになるよなあ」
近くにある小さな祠の奥に入り込み、中にあるケーブルと無線機を別のものに取り替えた。
祠を出るとまぼろしは消えていた。
「やれやれ」
数日待って、並行世界がきちんと消えたことを確認してから子爵の元を訪れた。
「そういうわけで、近くの神殿の石像の配置がずれていたみたいで、私が直しておきました。ただ、この程度で不安定になるということであれば、今後とも気を付けた方がよいでしょう」
「先生、助かったよ。また何かあったら助言をよろしく頼む」
子爵からはなかなか良いお礼をもらった。
しばらく研究費には困らないだろう。
自分の家に戻って椅子に座る。
「ふう、疲れた」
弟子が飲み物を持ってきてくれた。
「先生、まぼろしってあれのせい~?」
「多分なあ」
地球を離れ、雰囲気のいいこの世界に引っ越してきた。
暇を持て余して、少し前に地球の動画が見られるように回線を引いたのだが、こんなことになるとは。
「一応容量と電波漏れはどうにかしたけど、動画の見過ぎには注意しようか」
「はい、でも面白くてつい長い時間見てしまいます~」
「そうだよな。私も見る時間には気を付けよう」